2024年4月16日(火)

Wedge2023年10月号特集(ASEAN NOW)

2023年9月20日

 米国と中国の戦略的競争が激化する中、東南アジアは二つの大国が影響力を競い合う主要なフィールドの一つとなっている。

歴史的に大国間のせめぎ合いの中で生きてきたASEAN(ANADOLU AGENCY/GETTYIMAGES)

 米バイデン政権は、トランプ前政権の中国への対抗路線を継承しつつ、前政権以上に多国間協力を活用する方針をとっている。それは、日米豪印の協力枠組み(QUAD)、北大西洋条約機構(NATO)、主要7カ国(G7)といった枠組みで中国を念頭に置いた協力を推進していることに表れているが、東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携も重視されている。

 トランプ前大統領がASEAN首脳会議にたびたび欠席し、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱したのに対し、バイデン大統領は、2022年5月にワシントンでASEANとの特別首脳会議を主催した。双方の関係を「戦略的パートナーシップ」から「包括的戦略パートナーシップ」に格上げし、中国への対抗を意識した支援策を表明した。さらにその直後に東京で「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足を発表し、ASEANからはカンボジア、ラオス、ミャンマーを除く7カ国が参加した。

 一方、中国も、かねてより東南アジアを重要な地域とみなしてきたが、習近平体制になってからその取り組みはますます強化されている。「一帯一路」構想の主要なターゲット地域と位置付け、インフラ開発を推進し、17年以降は対外直接投資が減速傾向にあるにもかかわらず、東南アジアに向けた投資は拡大を続けている。09年以降、中国はASEANにとって最大の貿易相手国となっているが、20年以降は、中国にとってもASEANは最大の貿易相手となっている。

 首脳・閣僚の相互訪問は頻繁に行われ、21年11月には中国・ASEAN対話関係樹立30周年を記念する特別首脳会議をオンラインで開催し、双方の関係を「戦略的パートナーシップ」から「包括的戦略パートナーシップ」に格上げした。しかし、東南アジアの一部の国は南シナ海の領有権をめぐって中国と衝突し、中国の影響力の増大には多くの国が警戒感を共有している。

 ASEANの国々は、こうした米中の戦略的競争にどのように対処しているのだろうか。そこには、歴史的に大国間のせめぎ合いの世界で生きてきた中小国の知恵が見出される。大国の対立がもたらすリスクをヘッジしながら、日本を含む重要な域外国を巻き込むことで、自らに有利な状況を作り出そうとする「したたかな現実主義」である。


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