2024年5月19日(日)

Wedge2023年10月号特集(ASEAN NOW)

2023年9月20日

 東南アジアは新興国の中で経済発展の成功例として論じられることが多い地域だが、昨年はロシアによるウクライナ侵攻後の混沌とした状況において、20カ国・地域(G20)の議長国だったインドネシアがサミットを成功させたように、グローバルサウスの雄として政治的存在感も高めている。

先手に回り「手遅れ」を防げ
日本の強み生かし互恵的発展を

 このようにASEANが米中の戦略的競争に対処する中で、日本の役割はますます重要になっている。

 米国が対中強硬策と内向きな経済政策に傾く中で、米国とASEANの双方と政治経済両面で強固な関係を築いている日本は、その間の媒介を期待される立場にある。IPEFはTPPに代わる米国のコミットメントを示すツールとして、日本もその立ち上げには積極的に協力したといわれている。

 日本はかねてよりフィリピンに沿岸警備能力向上の支援を行ってきたが、23年6月には米国、フィリピンとともに初の海上合同訓練を実施した。また、インフラ整備においても、日本の技術力やアフターケアには、今なお高い評価が寄せられ、中国にはない強みがあるとして歓迎する声は多く聞かれる。EVや気候変動対策などへのASEANの熱心な取り組みは、日本企業にとってもビジネスチャンスになり得る。だが、中国が優位な立場を確立する前に食い込まなければ手遅れになりかねない。

 外務省がASEANで実施した22年の世論調査によれば、「現在の重要なパートナーはどこか」との設問については、1位は中国(56%)、2位が日本(50%)、「今後重要なパートナーとなるのはどこか」との設問については、1位が中国(48%)、2位は日本(43%)となり、これまで1位だった日本は中国に抜かれた。しかしインドネシア、フィリピン、ベトナムでは今なお日本が中国を上回っている。

 中国の経済的プレゼンスの上昇と日本の相対的後退の趨勢は否定できないが、大国間競争への対処という点で日本はASEAN諸国と多くの利害を共有しており、前記世論調査でも、米国を上回る期待を寄せられている。

 日本にとってもASEANは貿易・投資の両面で中国と米国に並ぶ重要な相手先であり、インド太平洋戦略においても中核となるパートナーである。こうした独自の立ち位置を生かし、米中には実現できない互恵的な関係を築くことが日本には求められている。

   
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Wedge 2023年10月号より
日本人なら知っておきたい ASEAN NOW
日本人なら知っておきたい ASEAN NOW

今年は、日本ASEAN友好協力50周年の節目の年である。日・ASEAN関係は今、リージョナルパートナーからグローバルパートナーへと変貌しつつある。しかも、起業やデジタル化といった側面では、日本を大きくリードしているといえ、彼らの〝進取〟と〝積極性〟ある姿勢から学ぶべき点は多い。一方で、政治の安定、民主化などでは足踏みが続く。多様なASEANを理解するための「最初の扉」を開けるべく、各分野に精通した8人に論じてもらう。


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