2024年12月21日(土)

ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう

2024年2月21日

CASE2
4割の意見は多くの心をつかむ
井関農機×農業用機械
「しろプチ」。乗り降りしやすい補助ステップやグリップをつけ、大型のサンバイザも好評

 自営農業に従事する約130万人のうち、約4割が女性であることをご存じだろうか。井関農機は2013年から農林水産省主催の農業女子プロジェクトに参加し、女性にも使いやすい農業用機械の製作に力を入れ始めた。

 プロジェクト参画にあたって行った女性農業者へのアンケートでは、「農機の取り扱い方を教えてほしい」という声が多く寄せられた。同社IR・広報室の的場朱里さんは、「農機の使い方ではなく、作物の栽培方法のセミナー希望が多いと予想していたので、この結果は意外でした」と話す。こうして、農機の取り扱いセミナーは開催されることとなった。

 当初、茨城県の研修所で宿泊型のセミナーを行っていたが、「子どもがいると参加しにくい」という意見から、全国各地に広がった。その後、「使い方の普及ではなく根本的に女性にも使いやすい農機の開発をするべきではないか」(的場さん)と、商品開発に乗り出した。

 開発された農業用トラクタの「しろプチ」は、体格差によってハンドルやペダルに手足が届きにくい人のために、小型のトラクタでは珍しい前後調整機能付きサスペンションシートを取り付けた。

 農機は、季節や作物によって使用頻度が異なり、一定期間使わないことも多い。耕うん機の「ちょこプチ」はエンジンをかける順番に番号を振り、取り扱いガイドにつながる二次元コードを貼って使い慣れていない利用者をアシストした。このようなプロの女性農業者たちの意見を取り込んだ商品は、男性農業者、高齢の農業従事者からも好評だっただけでなく、趣味で家庭菜園などを楽しむ利用者からも反響があった。

 現在、セミナーや開発に携わった女性農業者は968人(24年1月現在)に上る。的場さんは語る。「女性農業者の意見を取り入れた商品は、結果的に多くの人が使いやすい商品につながるのだと思いました」。

 女性農業者が感じていた不便さを受け止めたことで、さらに多くの利用者を引き込んだ。性別や年齢に関係なく、広い意見を取り込み反映していくことは、開発者、利用者双方にメリットがあるのだ。


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