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2013年11月11日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

* * *

【解説】

 梅研究員の投機的なマーケットを許すことは問題が大きいという主張は至極当然である。しかし、お気づきであろうか。この文章は劉鶴主任の「383」報告書に対して真正面から批判を加えるわけではなく、マーケット主義者によって市場に任せるという部分が強調されて利用されないよう警戒せよ、と変化球で「383」報告書を批判しているのである。

経済の議論も、改革も、五里霧中

 そもそも経済改革の重要なポイントの一つは政府の介入をできるだけ減らし、市場メカニズムで問題解決を試み、最終的には小さな政府によって政府財政負担を減らすことを目指すというものだ。現在の共産党政権のもっとも深刻な問題である党・政府・軍幹部たちの汚職の問題は彼らが参与できる権益があまりに多く、既得権益層として公平で透明な経済競争を阻害している、という点であったはずである。

 しかし既得権益層は市場経済をより進めることで自分たちの権益が縮小し、さらにはその実態が白日の下に晒されるのではないかと戦々恐々としている。こうした点から物言う経済学者として有名な茅于軾氏のような学者が更なる市場化を主張したり、経済的理由から空母建設に異を唱えると狂ったような大バッシングを行って彼らの主張を圧殺しようとしている。

 バッシングの際に経済的理由として挙げられるのが市場経済の投機的側面や欧米による独占資本主義である。お分かりだろう。中国の政治も経済の問題も最終的には同じ問題、すなわち政治の問題に行き着くのである。巷では今回の18期3中全会で大胆な経済改革が打ち出される、との期待が表明される一方で、政治面での改革は進められずに終わるのではないかという悲観的見方もある。これは数日以内に答えが出るかもしれない。

 ただ注意すべきポイントを最後にもう一つ挙げたい。それは今回の会議で提示される(であろう)改革案は、「決議」であれ、「決定」であれ「綱要」であれ、あくまでも政府中央の改革案であり、方針に過ぎない。こうした案は中央を経て地方まで深く浸透し、その通りに実施されてこそ意味を持つ。提起された紙を以て改革が進んでいるかのような錯覚は禁物だ。政策実施の合否判断の基準としてもこの報告で提起されるような変化球による改革案の反対というような方法によくよく注意し、その実態まで目を配って初めて習近平政権の今後を占うことができる。中国の経済改革は五里霧中だ。


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