2024年5月3日(金)

BBC News

2024年4月20日

アメリカ連邦議会の下院は数カ月もの膠着(こうちゃく)を経て、ウクライナやイスラエルなどに総額953億4000万ドル約(約14兆7000億円)規模の支援を提供する緊急予算案を20日にも可決する見通しとなった。

野党・共和党が僅差で多数を占める下院では、どちらへの軍事支援にも声高に反対する勢力があり、下院通過には民主党と共和党の超党派の協力が必要となる。

マイク・ジョンソン下院議長(共和党)は、ウクライナに608億ドル(約9.4兆円)、イスラエルに264億ドル(約4兆円)、台湾を含むインド太平洋地域に81億ドル(約1.2兆円)の支援を提供する緊急予算案を、採決にかけると決定した。

上院が2月にいったん可決した包括支援予算案を、下院本会議では項目ごとに分割し、採決する。このため、すべての内容が一度に可決されるとは限らない。

下院の緊急予算案について18日深夜、ジョンソン議長を支援する共和党議員たちに民主党議員たちが加わり、本会議での採決に至るよう、下院規則委員会での手続きを通過させた。

さらに19日朝には本会議で両党の議員たちが賛成316、反対94で、最終的な審議と採決を20日午後に行うと決定した。この時点で賛成が圧倒多数のため、最終的な予算案も可決され、民主党多数の上院に送られる見通しだ。上院では速やかに可決され、ジョー・バイデン大統領の署名をもって成立することになる。

ジョンソン下院議長は、新しい移民制度改革法案も提出すると表明。ウクライナ支援に強硬に反対する共和党内右派を、これで納得させようとする動きとみられている。

ジョンソン議長はこれまで、党内右派と異なる動きをしてこなかったが、今回は「正しいことを」をするのが自分の目標だとして、支援案を採決へと進めた。

しかし、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州選出)を筆頭とする共和党内の強硬右派からは、ジョンソン議長のこうした動きを受けて、議長辞任を求める動きが出ている。

下院議長が政策推進に必要な票数を得るのに、自分の党ではなく野党議員の支援を必要とする事態は、現代の連邦議会では異例。

民主党のハキーム・ジェフリース下院院内総務(ニューヨーク州選出)は19日、記者団に対して、ジョンソン議長が「非常に横暴」な共和党議員をまとめなくてはならず、大変な思いをしてきたと述べ、ウクライナ支援案をようやく下院採択に持ち込んだ議長の手腕をたたえた。

ウクライナは昨年後半以来、アメリカを中心とする西側諸国の早急な追加支援を強く求めてきた。ウクライナ東部の戦場ではロシアが前進を続けており、武器の不足や士気の低下が深刻視されている。

米中央情報局(CIA)のウォルター・バーンズ長官は25日、「2024年末までにウクライナが戦場で敗れるか、少なくともプーチンが政治的合意の内容を一方的に押し付けられる状態に至る危険は深刻」だと、演説の中で警告した。

他方、民主党内では、パレスチナ自治区ガザ地区攻撃でのイスラエルの行動に批判的な左派勢力が、イスラエルによる人権侵害にアメリカがこれ以上加担することを認めないと主張している。今回の緊急予算案のイスラエル支援には、人道支援の予算90億ドルが盛り込まれているため、これで一部の民主党議員は賛成に回る可能性がある。

さらに、採択を個別項目ごとにすることで、ジョンソン議長は部分的にでも支援案を下院通過させたいかまえを示している。

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/ce96q56wpydo


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