2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2024年4月3日

 2024年は、花見に出かける日本人は約6139万人、訪日外国人客は約373万人で、お花見の経済効果は、1兆1358億7149万円という予測がある(関西大学の宮本勝浩名誉教授予測)。桜は日本の象徴の一つでもあり、春の観光のキー・アイコンの一つである。そして、春の花見はおおよそ日本全土で活用可能なイベントであり、花見はイベントマネジメントの観点からも考察可能なのである。

桜は国内外から観光客を集めるキー・アイコンとなっている(pigphoto/gettyimages)

 伝統的に天皇家が通学してきた学習院の中等科・高等科の院章は桜で、学習院の同窓会組織は桜友会である。そして筆者自身もなぜか桜の時期にはわくわくして花粉症に耐えて花見をしてしまう。

 事象にストーリーを加えることで魅力や付加価値が高まると言われるが、桜は既に日本を代表するストーリーがあり、それぞれの地域に根差したストーリーもあるはずだ。桜はインバウンド観光のキー・アイコンとしての資格は十分なはずである。

 花見人口はもちろん国内が圧倒的に多いのだが、桜と花見はインバウンド観光の機会と課題を再考する非常に良い題材だ。本稿でその事業機会とオーバーツーリズム等の課題への対応を考えたい。

花見でのマネタイズの難しさ

 ビジネスチャンスがあるように見える花見だが、実はこれ自体でのマネタイズは簡単ではない。その理由の一つは、このような開かれたパブリックなイベントをだれが(どの組織が)取り仕切るかが曖昧になりがちなことである。

 地域の公的セクター、商店街、町内会等ステークホルダーが多様になる。できれば観光地域づくり法人(DMO)等がそれらのステークホルダーの調整役になることが望ましい。とはいえ、ステークホルダー間の調整をしても、花見という行為自体で大きくマネタイズしている事例はやはり少ない。

 多くの場合は、花見に伴う移動や宿泊と飲食が経済的に貢献し、それに関連する個別サービスが花見を活用している。個別サービスでは、例えばお花見タクシーが以前から存在する。

 最近は、高付加価値化も工夫されてきて、第一園芸と日本交通が連携した花見タクシーでは、花のプロフェッショナルである第一園芸が監修した桜の名所のなかから、観光タクシー資格を持った担当乗務員が「第一園芸」から学んだ知識を基に「桜ガイド」となって案内している。

 値段は3時間で1万7080円。平均的な貸し切りタクシーの価格は1万3000~1万8000円なのでやや高めの設定と言えるが、もう一段の高付加価値・高価格の工夫も必要であろう。

 もう一つの考えは、桜を“観光客の吸引ツール”として“地域の観光資源”と組み合わせて稼ぐという方法である。


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