2024年5月22日(水)

BBC News

2024年4月24日

パレスチナ自治区ガザ地区の当局は、南部ハンユニスのナセル病院の敷地内で283人の遺体が見つかったと発表した。国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は23日、「恐怖を覚える」と述べ、独立した調査の実施を求めた。

死亡した経緯や、遺体が埋められた時期は明らかになっていない。

ガザ地区でイスラム組織ハマスとの戦闘を続けるイスラエル国防軍(IDF)が遺体を埋めたとの見方も出ているが、IDFは「根拠がない」とした。

一方でIDFは、2月にナセル病院で2週間にわたって作戦を実施した際、パレスチナ人によって埋められた複数の遺体を「調査した」と説明。IDF部隊が「インテリジェンス(機密情報)によって人質がいる可能性が示された場所で」調査したとした。

既に解放されている10人の元人質は、ナセル病院で長期間拘束されていたと証言している。

IDFがナセル病院で作戦を実施する前、同病院のスタッフは周辺地域で戦闘があり、複数の墓地へのアクセスが断たれたことから、病院の中庭に遺体を埋葬せざるをえなかったと語っていた。昨年11月にIDFが北部のアル・シファ病院を初めて襲撃する前にも、アル・シファ病院から同様の報告があった。

IDFはガザ地区の多数の病院を襲撃したのは、ハマス戦闘員が病院内で活動しているためだとしている。ハマスや医療関係者はこうした主張を否定している。

遺体の状態は

パレスチナ当局は、ナセル病院の敷地内で見つかった283人の遺体のうち42人の身元が確認されたと報告した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報道官は、現在その裏付けを取っているところだと述べた。

「犠牲者は地中深くに埋められ、廃棄物で覆われていたと報告されている」と、ラヴィナ・シャムダサニ報道官はスイス・ジュネーヴで記者団に語った。

「死者の中には高齢者や女性、けがをした人がいたとされる。また、(中略)手を縛られたり、衣服をはぎ取られたりした状態で発見された人もいた」

トゥルク人権高等弁務官は、死者に関する独立した、効果的で透明性のある調査の実施を求め、「処罰を受けずに済むという空気が広がっていることを考慮すると、国際的な調査官を加えるべきだ」と述べた。

「病院は国際人道法の下で非常に特別な保護を受ける権利がある。そして民間人や拘束者、戦闘能力のない(敵対行為に参加していない)人々を意図的に殺害することは戦争犯罪にあたる」

ハマス、IDFが遺体を別の場所に埋めたと

ハマスが運営する民間防衛隊の報道官は22日、BBCアラビア語の番組「ガザ・トゥデイ」に対し、ガザでの戦闘中に殺害され、病院の中庭にあるその場しのぎの墓地に埋葬された「多数の」遺体が、イスラエルによる襲撃の最中に別の場所に移されたとの報告を、現地の複数のパレスチナ人から受けたと語った。

「調査した結果、占領軍(IDF)が集団墓地をつくり、ナセル病院にあった遺体を掘り起こしてその集団墓地に埋めたことが分かった」と、マフムード・バサル報道官は述べた。

「ガザ・トゥデイ」はまた、親戚の男性2人の遺体を探しているという男性に話を聞いた。この男性は、IDFが最近終了した攻撃の最中に、親戚の遺体を持ち出したとしている。

「私が親戚の遺体をアパートの敷地内に埋葬した後、(IDFが)やって来て、遺体を移動させた」と男性は述べた。「私たちは毎日、彼らの遺体を探しているが、見つからない」。

ハマスは、こうした遺体にはIDFによって「冷酷に処刑された」人が含まれると主張しているが、証拠は示していない。

ハマスの主張は「根拠がなく事実無根」とIDF

IDFは23日の声明で、「IDFがパレスチナ人の遺体を埋めたという主張には根拠がなく、事実無根だ」と述べた。

「ナセル病院周辺でのIDFの作戦中、人質や行方不明者の捜索活動に基づいて、パレスチナ人がナセル病院周辺に埋めた遺体の調査が行われた」

「調査は人質がいる可能性を示す情報があった場所でのみ、慎重に実施された。死者の尊厳を保ちつつ、敬意を持って実施された。調査した遺体のうちイスラエル人の人質ではなかった遺体は、もとの場所に戻された」

IDFは病院への襲撃で「病院内にいたテロリスト約200人」を拘束し、弾薬のほか、イスラエル人の人質のための未使用の医薬品も発見したという。

また、この襲撃は「標的を絞った方法で、病院や患者、医療スタッフに危害を加えることなく」実施されたと主張した。

病院で何が

しかし、3人の医療スタッフは先月、BBCに対し、襲撃を受けた際に拘束され、屈辱的な扱いを受けたと述べた。殴打され、冷や水を浴びせられ、何時間もひざまずくことを強要されたとも語っていた。

IDFに占領された後もナセル病院に残っていたという医療スタッフによると、水や電気、そのほかの物資が不足するなどし、患者のケアができずに13人が死亡したという。

4月1日、IDFはガザ市内のアル・シファ病院から引き揚げた。IDFはアル・シファ病院での作戦について、「ハマスのテロリストらがアル・シファ病院内で再編成された」ために実施された、もう一つの「正確な」作戦だったとしている。

IDFは当時、2週間にわたる襲撃で病院とその周辺で200人の「テロリスト」を殺害したと発表した。また、500人以上を拘束し、複数の武器や情報が「病院の至る所で」見つかったと付け加えた。

その5日後、世界保健機関(WHO)はアル・シファ病院にチームを派遣。同病院は「今や空っぽの抜け殻状態」で、ほとんどの建物が広範囲にわたって損傷または破壊され、大部分の設備は使用できない状態か灰になっていると、WHOは説明した。

また、救急診療や管理棟、外科病棟のすぐ外には地面の「浅い部分に多数の墓」が掘られ、「多くの遺体の手足が見える状態で、部分的に埋められていた」とした。

IDFはアル・シファ病院についても、患者に危害が及ばないようにしたと主張している。

しかし、WHOは同病院の院長代理の話として、IDFに包囲されている間、患者はひどい状況に置かれていたとした。治療へのアクセスが欠如し、医療スタッフの移動が制限されていたことから、少なくとも20人の患者が死亡したと報じられている。

OHCHRのシャムダサニ報道官は、2つの埋葬地に計30人の遺体が埋められており、そのうち12人の身元が判明していることが、OHCHRが確認した複数報告書で示されていると述べた。

ガザの市民防衛部門の報道官は9日、アル・シファ病院の周辺から381人の遺体が収容されたと米CNNに述べた。ただ、この数には同病院の敷地内に埋められた人は含まれていない。

トゥルク国連人権高等弁務官は、ここ数日の、イスラエルによるガザ南部ラファへの一連の空爆の犠牲者の大半は女性と子供で、「戦争行為を超えている」と非難した。

20日夜には、死亡した妊婦に緊急帝王切開が行われ、胎児が取り出された。女性の夫ともう1人の娘も死亡した。

トゥルク氏は、150万人が避難しているラファに対する全面的な地上攻撃は、国際人道法と人権法に対するさらなる違反につながると、イスラエル側に再び警告した。

これに対してIDFは、「ハマスの軍事・行政能力を解体するために活動している」と主張した。

そして、「ハマスがイスラエルの男性や女性、子供たちを意図的に攻撃しているのとはまったく対照的に、IDFは国際法に従い、民間人の被害を軽減するために実現可能な予防措置を講じている」と付け加えた。

(英語記事 UN rights chief 'horrified' by mass grave reports at Gaza hospitals

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cv2jn0l2nn7o


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