2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月2日

 米国は、かつて日本に対してしたように、中国に対してもタダ乗りを戒め、米国の対中東政策への協力を求めている。昨年は中東地域に関する高官レベルの年次協議をスタートさせた。しかしこれまで2回開かれたこの協議は、さしたる成果を生んでいない。にもかかわらずオバマ大統領は9月の国連演説で、「米国の原油輸入は減少しているが、世界は引き続き中東地域からのエネルギー資源輸入に依存しており、この断絶は世界経済全体を不安定化させるだろう」と述べている、と指摘しています。

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 中国は、西太平洋地域については、軍事力も伴った戦略的動きをしていますが、それ以外の地域については、カネにものを言わせた商業的な拡張に委ねている感があります。中国は、実は自身の経済、東アジアの安定も米国に大きく依存しているのですが、他の地域については「タダ乗り」の側面がいっそう如実に見えます。

 本記事は、中国のタダ乗りを戒めていますが、それでは、中東地域やインド洋シーレーンの安全確保に中国軍の貢献を求めるべきかというと、それはそれで問題があります。日本は湾岸地域からの原油輸入の安全確保を中国に握られることを望みませんし、インドにとっては、インド洋に中国海軍の進出を認めることは、中国による「インド包囲」を海洋からも行わせる結果になるからです。インド洋の安全は米、印、豪の海軍によって保障されているのであり、この構図を崩すことは望ましくありません。

 本記事がいみじくも指摘している通り、ジブチにおける自衛隊の基地、及び同地域に海賊掃討を目的に常駐している自衛隊艦船・PC3等は、原油輸入シーレーンの防護にも使えます。そして、安倍政権は、集団的自衛権行使容認の重要な例として、日米によるシーレーン防衛を挙げています。自衛隊の態勢の面でも、法的側面でも、日本がシーレーン防衛を通じてインド洋におけるプレゼンスを高める方向にあります。これは、中国が「タダ乗り」政策を転換して、インド洋にシーレーン防衛を名目として本格的に進出するか否かにかかわらず、日本の海洋安全保障戦略の王道というべきものです。

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