2024年6月16日(日)

BBC News

2024年5月23日

ディヴィッド・グリッテン、BBCニュース

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は21日、パレスチナ自治区ガザ地区南部の街ラファでの食料配給について、支援物資の不足と、現地での安全を確保できないことを理由に停止されたと発表した。

UNRWAはラファ東部でイスラム組織ハマスに対するイスラエルの軍事作戦が続いており、UNRWAの配給センターと国連の世界食糧計画(WFP)の倉庫へアクセスできない状況になっていると警告した。

イスラエル軍のラファでの作戦は2週間前に始まった。以来、ラファにいた100万人以上の避難者のうち少なくとも81万5000人が街から逃れている。

UNRWAは同機関の保健センターが過去10日間にわたり医療物資を受け取っていないことも明らかにした。

ガザの海岸には、海から人道支援物資を運び入れるための浮桟橋が設置されたばかりだが、アメリカはこの浮桟橋からガザ北部に入った物資が、人道支援団体によってパレスチナ人に配給されているとは考えていないと述べていた。

18日には、食料を求める大勢のパレスチナ人が、桟橋から援助物資を運ぶWFPのトラックを妨害。新たな輸送ルートが決定されるまで輸送を停止する事態となった。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、イスラエル側で約1200人を殺害し、252人を人質に取った。イスラエルはハマス壊滅を掲げてガザでの軍事作戦を開始した。

ハマス運営のガザ保健省によると、同地区での死者は3万5640人を超えている。

ガザでの戦闘開始から7カ月がたつ中、イスラエルは、ラファ制圧と、最後に残っているハマス大隊の排除なしに勝利はあり得ないと主張している。

一方で国連や西側諸国は、ガザへの全面攻撃は多数の民間人の死と人道的大惨事につながりかねないと警告している。

イスラエル軍の作戦で倉庫などにアクセスできず

イスラエル国防軍(IDF)は5月6日、ハマスの工作員やインフラに対する「精密な作戦」と称する作戦を行うとして、ラファ東部の住民に身の安全のため、避難するよう命じた。

それ以降、イスラエル部隊は街の中心部まで前進し、エジプト国境のラファ検問所を制圧した。同検問所の閉鎖が続く中、国連はイスラエル国境のケレム・シャローム検問所にアクセスするのは危険すぎるとしている。

イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は20日、「ラファでの地上作戦を拡大する決意だ」と宣言した。

UNRWAは21日の報告書で、イスラエルの作戦によりUNRWAの配給センターとWFPの倉庫へアクセスできなくなり、食料配給を停止せざるを得なくなったと説明した。

この影響について尋ねられたステファン・デュジャリック国連報道官は、「(ガザの)人々は食事を取れずにいる」と、米ニューヨークで記者団に答えた。

どれだけの人が今もラファで生活しているのかは不明だが、UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は19日、「(街の)人口の半数近くが路上にいる」と述べ、80万人以上が残っていることを示唆した。

イスラエル軍、物資搬入を「促進している」と

IDFはラファの北側のアル・マワシからガザ中部デイル・アル・バラフへと広がる、IDFが指定した「拡大人道地域」に向かうよう住民に指示している。同地域に行けば野戦病院やテント、食料、そのほかの物資が見つかるとしている。

しかし国連は、ガザに安全な場所はどこにもなく、指定された地域はすでに多くの人でごった返し、清潔な飲料水の供給や衛生施設もないとしている。

IDFは21日、イスラエル兵はラファ東部で「テロリストのインフラや建物に(中略)的を絞った襲撃」を続けており、兵士に近づこうとした「テロリスト数十人を排除した」と発表した。

IDFは別の声明で、ガザ全域で「食料、水、医療物資、避難所設備を積んだ数百台のトラックの通行」を促進しているとした。

21日には援助物資を積んだトラック381台がケレム・シャローム検問所を通過し、さらに70台がエレズ・ウェスト検問所経由でガザ北部に入ったと、IDFは報告している。しかし、650台のトラックが今も援助機関が物資を回収するのを待っている。

国連は、ケレム・シャロームに安全にアクセスできないのと同時に、エレズ・ウェスト周辺の地域がイスラエルの避難指示の対象地域に含まれているとも指摘している。

国連は「飢饉」を警告、海上からの物資搬入は

3月に発表された、国連の支援を受けた評価報告は、ガザの110万人が壊滅的なレベルの飢餓に直面し、推定30万人が身動きが取れなくなっているガザ北部では5月までに飢饉(ききん)が起こりうると警告していた。

正式には飢饉は宣言されていないが、WFPのシンディ・マケイン事務局長は今月初め、「北部で本格的な飢饉が発生し、南下しつつある」と述べた。

17日、ガザ市の南西にある米軍の浮桟橋から搬入された最初の援助物資が、トラックで運び出された。米政府関係者はこの浮桟橋について、「人道支援を急増させるもの」だとしている。

米中央軍司令本部は21日早く、569トンの援助物資が、キプロスから貨物船で届いたと発表した。

しかし同日、国防総省報道官のパット・ライダー准将は米ワシントンで記者団に対し、人道支援組織による物資の配給には至っていないと述べた

国連のドゥジャリック報道官によると、請負業者は17日、桟橋からデイル・アルバラフにあるWFPの倉庫までトラック10台分の援助物資を運ぶことができた。しかし、翌日に運ぶ予定だった16台のうち11台は、飢えた群衆に行く手を阻まれたという。

「これらのトラックは、援助活動が行われていない地域を走行していた」と、ドゥジャリック氏は説明した。「自分たちには全く援助が届かないのではないかと、彼らは不安だったのだと思う。彼らは可能な限りのものをつかんでいた」。

ライダー国防総省報道官は、アメリカとイスラエル、国連の間で「(支援)スタッフと貨物を安全に移動させるための代替ルートを決定する」ための協議が行われたと明らかにした。

「もちろん状況が許せば、今後数日のうちに支援物資が配給されると見込んでいる」と、ライダー氏は付け加えた。

病院が攻撃受けたとの報告も

こうした中、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、IDFとパレスチナの武装勢力がジャバリア近郊で戦闘を繰り広げる中、ガザ北部で部分的に機能しているガザ最大の病院が21日、4回も攻撃を受けたとの報告があると警鐘を鳴らした

北部ベイト・ラヒアにあるカマル・アドワン病院の救急部門がIDFのミサイル攻撃を受け、患者をベッドごと病院の外の道路に運ばざるを得なくなったとの報告が、複数の医療従事者から寄せられている。IDFはこうした報告について確認中だとした。

WHOはまた、ジャバリアのアル・アウダ病院が19日から包囲され、スタッフや患者、付き添いの人々が院内に閉じ込められているとしている。

IDFはハマスが工作員を再編しているとして、ジャバリアに再び入ると発表。11日以降、何万人もの市民がジャバリアから避難している。

(英語記事 UN halts Rafah food distribution due to shortages and hostilities

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cn44jndy51do


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