台湾交通大学の邱奕宏准教授が、過去数年間に台湾・中国間の経済関係は進んだが、同時に台湾の安全保障の備えは徐々に崩れ、いまや危険な段階に向かいつつある、と10月30日付タイペイタイムズで警鐘を鳴らしています。
すなわち、台湾と中国との経済関係の緊密化とともに、台湾から見た中国との関係の位置付けは、国防の考え方に大きな影響を及ぼす。
中国の国防費増大に対して、台湾の国防予算は伸びず、馬政権の目標とするGDP3%にはほとんど届かない。台湾海峡を挟んで軍事バランスは中国の有利な方向に大きく動いている。現在の米国の財政状況から見て、中台間の軍事バランスはますます台湾に不利な方向に進むだろう。
台湾軍の士気は低下している。いじめや不適当な訓練などといった規律の緩みは、台湾社会の軍に対するイメージを大きく損なった。軍上層部の軍人による中国への機密漏洩というスキャンダルもあった。
さらに、最近は、台湾の民主主義体制を守り、台湾のアイデンティティを維持するという考え方が曖昧になり、希薄になってきたのではないかと懸念される。
フィリピンや日本などが軍備増強に動いているのに対して、台湾は完全に逆の方向を向いている。台湾は中国に対し、宥和政策をとり、中国との関係改善により経済上の利益をあげようと必死である。
中台間の経済交流が進めば、国防は国の優先度の中では下のほうに追いやられる。規律の弛緩や士気の低落は驚くに値しない。
国防の基本は、何のために戦い、何を守るかという大義に関係する。台湾のように小さい国にとっては、国防力はもっとも根本的な国の力である。それは短期的な経済上の利益のために、軽視されたり、取引の対象にされてはならない。
ここ数年間は中台関係がもっとも平和的な安定した時期であった、と言う人もいるが、他方この時期は台湾の安全が徐々に崩れ、危険な状況に向かう時期であったともいえる。