2024年12月14日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月23日

 エコノミスト9月21-27日号が、台湾では、馬総統と同じ国民党のライバル、王金平・立法院長(国会議長)との確執が与党国民党の結束を脅かし、台中関係にも影響が出ている、と報じています。

 すなわち、馬英九は、公金横領で有罪とされた野党民進党の重鎮、柯建銘の判決が上級裁判所で覆されたのは、王金平が影響力を悪用したためだとして、王の党籍を剥奪したが、これが裏目に出て、馬の支持率は9.2%に急落した。台湾の有権者は、これを司法の独立の擁護とは見ず、馬によるライバル打倒の動きと受け止める一方、台湾生まれの本省人で人当たりの良い王は、政界各方面からの支持を獲得し、9月13日には、台北の裁判所から党籍、立法院長の地位の維持を認められた。国民党幹部も、「やり方が性急過ぎた」として馬に批判的である。

 このライバル劇の波紋は台中関係にも及んでいる。馬は6月に調印したサービス部門の貿易・投資合意について国会の承認を求めているが、王は野党が要求する、一括ではない、項目別の投票に同意し、そのため、承認の遅れが懸念される事態となっている。

 同合意の前途は多難である。元々中国との合意に強い警戒心を抱く民進党は、サービス部門を開放すれば、本土から労働者が大挙して押し寄せ、また、台湾の弱小企業が、国家に支援された資金潤沢な中国企業との競争を強いられる、と主張している。さらに、自らの再選が気になる一部の国民党議員も、支持率が低迷する馬の側につくことを躊躇っている。

 中国は合意の行方と共に、こうした台湾の政情にも強い懸念を感じているはずである。国民党の分裂は、民進党の政権復帰を促すことになりかねない。2000年当時も国民党の内部抗争のおかげで民進党が政権を獲得、その後8年間台中関係は緊張した。


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