5月24日付米Washington Post紙にて、Vance Serchukキヤノングローバル戦略研究所CFR-日立フェローは、オバマ政権は、台湾重視の姿勢をもっとはっきり打ち出すべきで、特に、米台間の武器輸出、軍事交流、サイバー攻撃への共通対策、TPPへの台湾参画の支持などを行ない、「アジア回帰」についても間違ったメッセージを送るべきではない、と述べています。
すなわち、2008年以来、中国とアジアの近隣諸国との関係はほとんど全て悪化したが、台湾との関係のみ改善した。オバマ政権はアジアの同盟国との関係を深めているが、台湾はその中に含まれていない。大統領補佐官始め米政府高官のアジア政策の演説に台湾は入っていない。
台湾はアジアの将来にとってますます重要になるだろう。今日の中国は東シナ海、南シナ海で新しい拡張主義に乗り出している。その主たる狙いは、米国の西太平洋における軍事展開能力を阻止することにある。
いまや、中国の野心は台湾を超えて、西太平洋に広がりつつある。だからこそ、台湾の戦略的意義をもう一度考えなければならない。
地政学的に見て、台湾は「第一列島線」の真ん中に位置する。中国から見れば、台湾をコントロールすることは、その列島線を突破する上で決定的に重要である。「台湾を失うことは、日本とその他地域の海軍力のバランスを完全に変えることになる」との日本研究者の意見は正しい。
かつて、台湾をめぐる紛争がなくなれば、米中間の関係は安定して平和なものになるだろうという考え方があったが、現実は逆である。いまや中国の野心は台湾を超えて、米国がこの地域で支配的地位 にあることを許さなくなっている。
台湾は、米国に対する信頼性のリトマス試験紙のようなものである。もし米国が活力ある民主主義の台湾を放棄しようとしていると見られれば、アジア諸国からの米国への信頼感は地に落ちるだろう。