今日、中台間の力のバランスは中国に有利な方向に展開しつつあり、台湾は米国からのより強い支援を期待している。それは、追加的な武器売却のみならず、台湾軍人の訓練や演習への協力、より高いレベルの軍事交流を必要としている。将来、台湾のTPP参加も考えなければならない。米国は台湾の運命に対し国家的関心を持ち続ける必要がある。台湾はアジアの輝ける場所であり、これを暗黒の場所にしてはならない、と述べています。
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オバマ政権はもう少しはっきりと米国が台湾の立場を支援していることを表明すべきである、との趣旨の本論評には賛成です。台湾は、東シナ海と南シナ海を扼する位置にあり、中国の艦船、特に潜水艦が「第一列島線」を突破して西太平洋に進出する上で最も意味のある戦略上、地政学上の要衝です。中国から見れば、「核心的利益」の諸問題の中でも最右翼を占めます。
これまで5年間の国民党政権下で、中台間の経済、観光客を含む人的往来は以前の民進党政権下におけるよりもはるかに進展しました。その結果、今日、中台間の経済関係については、中国経済の状況も反映し、これ以上進展が期待できない段階にまで来ました。今後、中国は、台湾との間で政治協議を始めたいところですが、台湾側がそれに応じる気配を見せておらず、関係全体は停滞しつつあるように見えます。
米国にとっては、本論評のいうように、何よりも自由、民主、人権の基本的価値を共有する台湾の立場を支援することが、「アジア回帰」を言う米国にとって首尾一貫していることになります。そのような米国の姿勢を、台湾人のみならず、アジア太平洋諸国の人々が注視していることは間違いありません。
米国としては、いたずらに中国を刺激、挑発することは避けたいでしょうが、要は、台湾から見て米国が自分たちの背後の支えになっていることが明白であるような支援を行うことが期待されています。具体的には、「台湾関係法」に基づく台湾防衛に必要な武器供与であり、より高いレベルの軍事交流であり、自由貿易協定、特に、TPP交渉に台湾を参画させるために働きかけることなどが考えられます。
日本については、十数年ぶりに日台間の漁業協定の締結に至ったことは、近年の快挙です。これにより、尖閣諸島領有権に関連して、中国と台湾が「連繋」する可能性が大幅に減少しました。今後の課題の一つは、日米が一緒になって、台湾のTPPへの参加を検討することでしょう。
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