ニューカレドニアにしかいない「カグー」という鳥は飛ぶことができない鳥で絶滅危惧種でもある。人間が近づくと頭部の羽を逆立てて「ワン、ワン」と子犬のような鳴き声で相手を威嚇するのが滑稽である。我が社AMJは2014年の1月で10周年を迎える。10年前にレアメタル専門商社として創業したが、当初はまさにこの「カグー」のように頼りないわずか10名の零細企業であった。
ただし、幸運にもレアメタルの仕事は競合相手が少なく人のやらないことができるロマンにあふれた仕事だ。当初はわずか40億円の売上でスタートした会社も、レアメタルブームのおかげで4年目には、約8倍の340億円の売上にまで発展した。発展の秘訣はレアメタル原料の選択と集中を徹底させたことだ。
市場規模の大きな銅や鉛、亜鉛、アルミなどのメジャーメタルは売上規模が大きい割に利益率は低く、使用資金量が掛かるので一切扱わず、レアメタル取引だけに特化した。それでも、金融危機の時期には資金を使いすぎるレアメタル貿易は、中小企業には馴染まない取引であった。限られた経営資源である「人、物、金」を効率良く活かさねばならないが、中小企業の経営資源は「ないない尽くし」である。人材は10人足らず、物はレアメタルだけに特化、資金は銀行頼みと何から何まで限定されていた。
一見、成功したかに見えた経営の6年目には未曾有の不況に襲われた。08年のリーマンショックのあおりで売上は激減したのだ。あれほどの不況になるとは誰も思わなかった。在庫が積み上がり負担が増加したが、市況の値下がりからの評価損がいくら出るのかが心配であった。ただし、それまでも半期ごとに滞留在庫は全て見切り損を早く出したので、結果的には評価損は軽微であり、不況を乗り切ることができた。
ところが、確実に景気の回復が期待された7年目の10年には突然レアアース原料が入ってこなくなった。尖閣諸島の問題で中国がレアアースの輸出禁止を打ち出したのである。その結果、未曾有の玉不足となり、11年の前半はレアアースの国際市況が暴騰した。さらに追い討ちをかけるように東日本大震災が襲った。まさに日本の国難と言っても過言ではなかった。