2024年12月23日(月)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2012年10月1日

 今年の夏休みは、南スペインで過ごした。日帰りでジブラルタル海峡を渡り、北アフリカにまで足を延ばした。アフリカに上陸して最初に出会うのが、モロッコのタンジェ港だ。アラブ様式で建てられたモスクの壁面装飾にはハッと息をのむような美しい色のモザイクが施されている。

アフリカのコバルトブルーの空にそびえるタンジェのモスク(筆者撮影)

 色彩には、どこの国においても伝統だけではなく、醸し出す雰囲気や、ある種の文化がある。

 今でこそレアメタルやレアアースは(ハイブリッドカーや携帯電話に不可欠な)磁性材料や電池材料その他いろいろな電子材料に利用されているが、昔は陶器やガラスの着色料などが主な用途だった。

 例えば、黄色の顔料はクロム、亜鉛、プラセオジムがあるし、赤は弁柄やモリブデン赤、カドミウム赤がある。青色と言えばウルトラマリン(群青)やラピスラズリ(瑠璃)やターコイズ(トルコ石)だが、最も多く使用されたのは、呉須土(鉱物名アスボライト=asbolite)という主成分が酸化コバルトの顔料だ。

 その酸化コバルトの輸出国の一つがモロッコで、中国向けに今も大量に輸出されている。

 昔、私も顔料ビジネスにのめり込んだことがあるが、これが本当に難しいビジネスだった。コバルトばかりでなくてクロムイエローやジンククロメートなどの無機顔料を中国から輸入して、赤の混ざった黄色と、青の混ざった黄色を判定しながら老舗の顔料屋さんに販売した。

 顔料屋さんとは、当時日本で最も扱いの多かった日本無機化学工業。ところが、顔料の世界ではどうしても色合いの違いを機器分析(スペクトル分析)することができず、最終的には「職人の眼」が判定基準になる。


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