2024年11月16日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月7日

 ワシントン・ポスト紙が、台湾は数十年にわたって、対立する2つの政党により青(国民党系)と緑(独立派)に分断されてきたが、ここ数カ月は、大勢の白いシャツを着た若者による新たな社会運動が起きている、との解説記事を11月10日付で掲載しています。

 すなわち、台湾では、ここ数カ月、「白シャツ軍(White Shirt Army)」と呼ばれる、白いシャツを着た若者による大きな社会運動が起きている。一部専門家は、この動きを、台湾における政治的方向性の変化の兆しだと捉えている。

 4カ月前、ネットへの投稿によりこの運動の火付け役となったLiulin Weiは、「我々は(国民党と民進党の)どちらの政党も指導者も支持しない。我々は、公民権や共通の価値観の適用、民主主義を目指しており、白いシャツを着るだけで我々の仲間に加わることができる。」と述べている。

 台湾の政治が中国本土からの独立の問題一色だった数十年を経て、白シャツ軍の強調する市民のための社会という問題が出てきたのである。中国は台湾を、場合によっては武力を用いて併合しなければならない、反抗的な省の1つと見ているのに対し、台湾は、自治権を持つ国家として存在することを望んでいる。台湾では、どのような形態の自治を行ない、どこまでそれを求めるのかが、国民党と民進党の争点であった。

 今回運動を起こした若者らは、台湾が自身をどう位置付けるか--主権国家、独立国家、或いは中国に属する自治省--よりも、台湾政府がどのような政策を採るかが重要であると述べる。

 2011年の米国のウォール街選挙運動の時と同様、白シャツ軍には正式な代表や正式なメンバーは存在しない。また同様に、次第に規模が縮小して消滅してしまう可能性もある。

 この運動の発生には幾つかの政治的要因があるが、その最大のきっかけは、若い兵士が上官による虐待で死亡したことである。誰もこの抗議運動がここまで大規模なものに発展するとは考えていなかった。約25万人が台湾総統府前広場に集まったと言われる、8月3日に行われた2回目の集会の数日後には、台湾の指導者は、軍の違法行為を調査する特別委員会の設置を約束し、内閣改造を発表した。

 国立台北大学のHou Han-jyun教授は、「台湾では、抗議するのは常に政党である。お金と人と動員力を必要とする。今回のケースは、Facebookへの投稿が行なわれただけで、それ以外何も要らなかった。」と述べている。ネットが使われたことと若者による運動だったことで、今回の運動を「アラブの春」と関連づけようとするメディアもあるが、白シャツ軍のメンバーは、そんなことはないと否定する。


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