2024年8月28日(水)

BBC News

2024年8月28日

デイヴィッド・シリート文化担当編集委員

英ロックバンド「オアシス」が15年ぶりに再結成し、来夏にイギリスなどでツアーを行うことが27日、同バンドのX(旧ツイッター)の公式アカウントなどで発表された。なぜ大騒ぎになっているのか。(文中敬称略)

「彼はスープの世界でフォークを持っているようなものだ」

2009年4月、英ロックバンド「オアシス」のギタリスト、ノエル・ギャラガーが、弟でボーカリストのリアム・ギャラガーについて述べたこの有名な発言こそ、けんかばかりの兄弟にも限界があることを示すサインだったのかもしれない。

限界はその4カ月後、特に機嫌の悪かったパリでのコンサートでやってきた(こうしてみると、8月はオアシスの重要な瞬間がすべて起こる月のようだ)。ノエルが最終的にバンドを出て行った時、誰もあまり驚かなかった。その絶頂期でさえ、兄弟の摩擦は名声の一部だったのだ。

オアシスは、ただの非常に有名なバンド以上のものだった。ロック界で最もカリスマ性のある2人が繰り広げるソープオペラでもあった。

BBCは先に、オアシスの興隆と解散についてのポッドキャストを放送した。8回にわたるシリーズは、アルバムやツアーの時期ではなく、有名なけんかの時期で分けてある。

だが、オアシスがどれほど有名だったかは覚えておく価値がある。

1990年代半ばのピーク時のオアシスは、それを経験しなかった人、あるいはわざわざ避けてきた人にとってさえ、ほとんど逃れられない存在だった。

1995年発売のアルバム「モーニング・グローリー」は、1990年代にイギリスで最も売れたアルバムとなった。イギリスでは500万枚、世界では2200万枚を売っている。

2009年に解散する13年前の1996年8月に、オアシスはキャリアの絶頂期を迎えていた。英ネブワースで開かれた野外フェスティバルで2日間にわたってヘッドライナーを務め、ブリットポップの頂点に立った。オアシスの演奏には25万人が集まった。

マニアック・ストリート・プリーチャーズ、ザ・プロディジー、ザ・シャーラタンズ、ケミカル・ブラザーズ、オーシャン・カラー・シーン、キャストといった残りの出演者は……ただの残りの出演者だった。

1996年2月にはBBCの音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」で、「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」と、そのB面曲、スレイドの「カム・オン・フィール・ザ・ノイズ」のカバーを演奏。1回の放送で2曲を披露した数少ないバンドのひとつとなった。

そして新聞には、毎日オアシスの記事が載っていた。

1997年の総選挙で地滑り的勝利を収めた労働党のトニー・ブレア党首(当時)は、首相官邸で祝賀会を開いた。

ブレア氏が笑顔で、同じく陽気なノエルと握手する写真は、1990年代後半にイギリス文化への誇りが高まった、あの短い蜜月、クール・ブリタニアの決定的なイメージとなった。

「あの時は30歳で、ドラッグで頭がおかしくなっていた。誰もがオアシスは史上最も偉大なバンドだと言ってきた」と、ノエルは振り返っている。

「そして、首相にワインを飲みに誘われる。そういうのが全部、ハイになった時の一部だった」

インターネット以前の文化では、音楽チャートやテレビ、新聞で目立つことが、その国のほとんどの人が、好きか嫌いかにかかわらず自分を知っていることを保証していた、言わば最後のとりでだった。

この時にノエルが言ったことは正しかった。「今や僕たちはローリング・ストーンズと肩を並べている。誰もがストーンズのことを耳にしたことがあるし、どんなバンドか知っている」

バンドの行くべき方向性は一つしかなかった。

オアシスが次のアルバム「ビィ・ヒア・ナウ」の制作に取りかかったとき、「モーニング・グローリー」はまだ全米ビルボード・チャートで5位だった。

1997年8月にこのアルバムがリリースされると、当初の興奮はすぐに収まった。驚くべきは、彼らがこれほど長く一緒にいられたことだろう。

ノエルは、オアシスを題材にしたオペラのアイデアについて聞かれた際、こう答えている。「16年間も同じ議論を繰り返している男2人が、オペラの題材になるとは思わない。『オアシス・ザ・オペラ』はとても短いものになるだろう」。

しかし、最もけんかの多かった時期でさえ、彼らはまだ力を持っていた。

2004年のグラストンベリー音楽フェスティバルでオアシスを見た時、興味本位で足を運んだ人たちですら、すべての歌詞を知っていたのを覚えている。配信アプリ「スポティファイ」やプライベート・プレイリストの時代には、同じようなことは起こらない。

「1万5000人が『ワンダーウォール』で叫んでいる光景に飽きることはない。ドラッグよりいい」と、ノエルは語っている。

あれから15年、オアシスは再び「8月の瞬間」を演出した。今度は2025年8月を見据えている。

1996年にネブワースに集まった25万人のファンは、今では40代から50代になったが、その熱狂の一部を子供たちに伝えることができた。

「ワンダーウォール」の歌詞をすべて知っている20代はたくさんいるが、そこにたどり着くには、大きなけんかをせずに12カ月を過ごす必要がある。

用心深いファンは、ツアーの初期日程のチケットを手に入れるのがベストかもしれない。

(英語記事 Why do we care so much about Oasis?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c8rxmp32k14o


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