「さまざまな事情で介護離職をする人がいるのは仕方がないこと。でも、仕事と介護の両立をするための選択肢がわからずに、後悔してしまうような介護離職をする人がいる現状は、変えていかなければならない」
ワーク&ケアバランス研究所(東京都渋谷区)で代表取締役を務める和氣美枝さんは話した。
「仕事と介護を両立する人」の介護離職の問題が注目を集めている。令和4年就業構造基本調査では、働きながら介護をしている人は2022年時点で約365万人いるとされ、介護をしている人の数の約6割を占めている。
「仕事を減らすようになって、社会とのつながりがなくなり精神的につらかった。安定した収入もなく、まさに悪循環に陥っていた」
こう話すのは、タレントであり、介護離職の防止啓発を行うKABS介護離職防止対策促進機構サポーターとしても活動する大島直也さん。がんと診断された母親の介護をするために仕事を減らした結果、ノイローゼのようになっていたという。
家族介護者の中で、年間約10万もの人が介護離職にいたっている。
しかし、「誤解が生じている面もある」と話すのは、日本総合研究所調査部副主任研究員の岡元真希子さんだ。「『介護離職者が年間10万人』は、1年間の離職者全体の1%に過ぎない。なかにはたまたま介護が契機になって早期退職を選ぶ人や、転職する人も含まれる」からである。
自身も20年以上母親の介護に関わる和氣さんもこのように話す。
「令和4年就業構造基本調査によると、『介護』で前職を辞めた人数は『育児』よりも低い、14項目中の12位に過ぎない。しかし、働き方改革や育休の推進などで対策が充実している項目が多い一方、介護の対策は発展途上である。問題は介護離職しか選択肢がないと思い込んでしまっている従業員がまだまだいること。自分の人生を諦めるような介護離職者をゼロにするためには、対策を進めなければならない」