レバノン東部ベカー渓谷(高原)で28日、イスラエルの攻撃があり、少なくとも60人が死亡、58人が負傷したと、レバノン保健省が発表した。
レバノン当局によると、攻撃はバールベクの16地区を標的としたもので、死者には子供2人が含まれる。
ベカー渓谷はイスラム教シーア派組織ヒズボラの拠点の一つ。現場ではまだ救助活動が続いていると、レバノン保健省は付け加えた。
イスラエル軍は攻撃についてコメントしていない。
イスラエルはこの5週間、レバノン各地に数千回の空爆を実施している。空爆の標的はヒズボラの工作員やインフラ、武器だとしている。
バールベク・ヘルメル州のバシール・ホドル知事は28日の攻撃について、イスラエルがヒズボラとの戦闘をエスカレートさせた先月以降、この地域で起きた攻撃の中で「最も暴力的」なものだと述べた。
ソーシャルメディアに投稿された未検証の動画には、建物が損傷し、森林で火災が発生し、救助隊が負傷者を捜索する様子が映っていた。
ボダイ町で撮影されたとされる複数の動画もソーシャルメディアに浮上。がれきの中に閉じ込められているとみられる人々を救出するために重機が必要だと懇願する住民たちの姿が映っている。
バールベクの民間防衛隊の地域責任者ビラル・ラード氏はBBCに対し、空爆は「火の輪」のようだったと語った。
「とても激しい攻撃に見舞われた夜だった」
「火の輪が突然この地域を取り囲んだかのようだった」
ラード氏は、攻撃は「民間人が暮らす住宅地やその近く」を標的にしたものだったとし、装備の不足が捜索・救助活動を妨げていると述べた。
最も甚大な被害を受けたアルアラク町では、同じ家族の16人が死亡したという。
バールベクにはユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録されている古代ローマ時代のヘリオポリスの遺跡がある。
ユネスコの広報担当者は、衛星画像を分析したところ、世界遺産に登録されているバールベクの遺跡周辺では被害は確認されなかったと述べた。
ユネスコは「レバノンで進行中の危機が文化遺産に与える影響を注視している」と付け加えた。
レバノン保健省によると、沿岸都市ティルス(スール)で28日、イスラエルによる空爆があり、7人が死亡、17人が負傷した。イスラエルは同市の中心部から離れるよう市民に警告を発していた。
ヒズボラは同日、レバノン南部の国境付近でイスラエル軍と衝突したほか、イスラエル北部ハイファの海軍基地に向けてロケット弾を発射したと明らかにした。
イスラエルとヒズボラの敵対行為は、ヒズボラと同様にイランの支援を受けるイスラム組織ハマスが昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区で報復攻撃を開始した翌日から始まった。ヒズボラはパレスチナ人を支援するために、レバノンからイスラエル北部やその周辺にロケット弾を発射した。
それ以来、レバノン国内では2700人以上が死亡し、1万2400人以上が負傷したと、レバノン保健省は発表している。
イスラエルは対ヒズボラ作戦を激化させ、9月30日にレバノン南部へ地上侵攻した。「限定的、局地的、かつ標的を絞った急襲」でヒズボラの武器やインフラを破壊したと、イスラエルは発表した。
レバノン政府は、イスラエルとヒズボラの紛争で最大130万人が国内避難民となっているとしている。
(英語記事 Lebanon says 60 killed in Israel strikes on eastern valley)