米大統領選挙の民主党候補だったカマラ・ハリス副大統領は6日午後、首都ワシントンで演説し、敗北を認めた。支持者らに向け、共和党候補だったドナルド・トランプ前大統領氏の勝利を受け入れるよう呼びかけるとともに、理想のために戦うことを「決してあきらめない」よう訴えた。
ハリス氏は、前夜に勝利演説をする予定だった、自分の出身校ハワード大学で演説した。「この選挙結果は私たちが望んだものではない」としながらも、平和的な政権移譲が必要だと強調した。
そして、「アメリカの約束の光は、常に明るく燃え続ける。私たちが決して諦めない限り、そして戦い続ける限り」と述べた。
ハリス氏はまた、副大統領候補のティム・ウォルズ・ミネソタ州知事や選挙スタッフ、支持者、投票スタッフ、選管関係者らに感謝を表明した。演説の最中、聴衆の多くが涙をぬぐっていた。
さらに、「みなさんの中で今、さまざまな感情が渦巻いているのは分かっている」と述べ、「それでも私たちは、この選挙の結果を尊重しなくてはならない」と続けた。
ハリス氏は、トランプ次期大統領に電話したと説明。「彼とそのチームの政権移行を支援すると伝えた。私たちは平和的に政権を移譲すると伝えた」と述べると、支持者らからは大きなブーイングが起きた。
ハリス氏は、「私はこの選挙での負けを認めるものの、この選挙戦の原動力となった戦いについては、負けを認めない」と付け加えた。この日の演説で副大統領は、「戦い」や「戦う」という言葉を19回使った。
選挙戦では両候補がたびたび互いをののしり合った。ハリス氏はトランプ前大統領を「ファシスト」と呼び、アメリカの民主主義を脅かす存在だと非難した。
ハリス氏はこの日の演説で、「多くの人が、暗黒の時代に突入するかのように感じているのは分かっている。しかし私たち全員のためにも、そうならないことを願っている」と述べた。
上院議員(カリフォルニア州選出)も務めたハリス氏は、女性、黒人女性、南アジア系として初の大統領を目指したが、及ばなかった。トランプ氏は激戦州のペンシルヴェニア、ノースカロライナ、ウィスコンシン各州などで勝利し、当選を決めた。
ハリス氏の側近が記者団に説明したところでは、ハリス氏とトランプ氏は6日に電話で話した。「平和的な権力移行と、すべてのアメリカ人にとっての大統領でいることの重要性」について話し合ったという。
トランプ氏の広報担当は、この電話で次期大統領が「選挙戦でハリス副大統領が見せた強さ、プロフェッショナリズム、粘り強さについて言及し、両指導者は国を結束させる重要性で一致した」と述べた。
ホワイトハウスによると、ジョー・バイデン大統領もハリス氏と電話で話し、「副大統領の歴史的な選挙戦を祝福した」という。バイデン氏の側近によると、同氏はハリス氏の演説をホワイトハウスで生中継で見ていたという。
ハワード大学では、ハリス氏の支持者らが悲しみに暮れていた。サンフランシスコから来たというチャールズ・コリンズ氏は、「自分の感情は、悲嘆のプロセスに沿って動いている」、「それでもカマラは私たちに、傷を癒やすよう求めている。自分たちがやるべきことにまた取り組めるように」とBBCに話した。
演説会場に集まった人数は5日夜より明らかに少なく、雰囲気は沈んでいた。同大学の法学部の学生は「今はかなり絶望的だ」、「私たちの多くが途方に暮れていると思う」と言った。連邦政府の職員だという若い女性は、「大勢の人が、自分の体や権利より経済を優先したのが、受け止められない」、「本当に途方に暮れている」とBBCに話した。
出口調査によると、ハリス氏は予想されたほど、女性からの支持を得られなかったとみられる。ハリス氏に投票した女性有権者の比率は約54%で、2020年大統領選でバイデン氏に投票した57%を下回った。
黒人やラティーノ(中南米系)も、ハリス氏に投票した人の割合は、4年前にバイデン氏に投票した人の割合よりやや低かったとみられる。
ハリス氏の選挙運動は、明確な経済的メッセージを打ち出せていないと批判されることもあった。数年続くインフレに直面している米国民にとって、経済は極めて重要な問題となっていた。
(英語記事 Harris tells supporters 'never give up' and urges peaceful transfer of power)