BBCデータジャーナリズム・チーム
ドナルド・トランプ前大統領が、次期大統領になることが決まった。いったん再選を阻まれた大統領経験者がホワイトハウスに復帰するという、歴史的な結果となった。
開票はまだ続いているものの、何が有利に働いてトランプ次期大統領の勝利につながったのか、情勢が明らかになりつつある。多くの場所で、やや地味な形で、得票を伸ばし続けたのだ。
次期大統領は、2020年の前回大統領選で民主党が勝った激戦州ジョージア、ペンシルヴェニア、ウィスコンシンで勝ち、当選に必要な選挙人270人を確保した。
その3州では、いずれも票差はわずかだった。ウィスコンシン州での得票率の差は、1ポイント未満でしかない。票数の差で言うと、米東部時間6日夕の時点で約2万8000票余りの差だ。
この州でトランプ候補がなぜ優勢になったのか、特定の人口グループや特定の地域を理由にして説明するのは難しい。
共和党と民主党のどちらも、州内のどの郡でも、2020年に比べて得票率を5ポイント以上増やしていない。
2020年と今回で郡ごとの得票率を地図で比較しても、ほとんど違いがわからない。
民主党のカマラ・ハリス副大統領は、都市部ミルウォーキーとマディソンという従来の支持基盤で善戦した。都市部の有権者は実際、大勢が彼女を支持した。しかし、トランプ候補は州内の多くの地域で、小幅ながらも支持を増やした。そのことが、結果につながったのだ。
2020年の大統領選では、ジョー・バイデン現大統領がジョージアとペンシルヴェニアの両州を獲得したことが、当選のきわめて重要な要素となった。
今回の選挙では、トランプ候補が両州で勝った。まだ開票作業は続いているので、正確な理由は今のところ不明だ。しかし、ウィスコンシン州と同じように、小幅な支持拡大を多くの場所で実現したというパターンが、他の州でも見え始めている。
ネヴァダ州の中南米系とアジア系に変化
西部の激戦州ネヴァダではまだ勝敗の決着がついていないが、ここでもトランプ次期大統領が優勢だ。これまでの開票結果では、有権者が大勢いる人口グループでは、投票行動にあまり変化はない。
黒人有権者は前回選挙でバイデン氏を支持したのと同じように、今回はハリス氏を支持した。そして白人有権者は今回も、トランプ候補を支持した。
ただし出口調査によると、ヒスパニックとアジア系の有権者の間で、トランプ候補はかなり支持を伸ばした様子だ。そして、ハリス氏はそのグループで4年前のバイデン氏よりも支持を失った。
トランプ候補は2020年選挙に比べてヒスパニック有権者の間の得票率を、13ポイント伸ばした。ということは、ヒスパニック票はどちらの候補も引き分けて48%ずつ獲得したことになる。
ネヴァダ州のアジア系有権者も同様だ。2020年に同州でトランプ候補はアジア系票の35%を得たが、今回はそれを57%に伸ばした。
アジア系有権者は出口調査に回答した人の4%に過ぎないものの、これによく似た変化が他の場所で決定的な差分になったことが分かっている。
勝利の票差
国の西側を中心に開票は続いているが、今回の選挙でも、都市部と農村部で有権者の行動に隔たりがあったことが、判明しつつある。
全国各地の主要都市では、ハリス候補が数万票差で優勢だった。
対するトランプ候補は、都会と都会の間の農村部で圧倒的に強かった。場所ごとの票差はそれほど大きくなくても、地域的な広がりが大きかった。そしてその差分が積みあがったのだ。
有権者は変化を求めた
トランプ候補が前回2020年には落としたものの今回は勝った州でも、詳しい情勢がわかるには数日先のことになるだろうが、どういう人たちがどう投票したかは出口調査で判明しつつある。
政策テーマごとに見ていくと、人口グループや地域を問わず、一貫している図式がある。
移民と経済が最も重要な問題だと答えた人の間では、トランプ候補が圧倒的に支持された。
妊娠の人工中絶や民主主義の状態を重視していた有権者は、4人中3人がハリス候補に投票した。
何が優先課題か、二つの有権者グループに大きな隔たりがあった様子がうかがえる。
両陣営とも投票日に向けて、移民と経済、そして中絶と民主主義というテーマをそれぞれ強調し続けた。両陣営の主張が支持者に届いたのは明らかだ。
両候補の特徴も、投票動向に影響した可能性がある。
「必要な変化」を国にもたらす大統領候補を求めていた有権者は、その大多数がトランプ候補に投票した。指導者としての力量を何より重視した有権者も、3分の2が同様に投票した。
ハリス候補に投票した人の大多数は、副大統領の判断力が優れていると好感し、「私のような人のことを大事に思っている」と感じていた。
ただし、変化を求める心理というのは有権者の投票行動に大きな影響力を持つことがある。