オーストラリア政府は7日、16歳未満の子供たちによるソーシャルメディアの利用を禁止する、「世界に先駆けた」法案を提出する予定だと発表した。
アンソニー・アルバニージー首相は、来週議会に提出する予定のこの法案は、ソーシャルメディアがオーストラリアの子供たちに与えている「害」を軽減することを目的としていると述べた。
「これは、子供を持つ親たちのための法案だ。親たちは私と同じように、子供たちのオンライン上の安全について非常に懸念している。オーストラリアの家族に、政府が味方だと知ってほしい」と、同首相は述べた。
法案の詳細はまだ議論されていないが、政府は、すでにソーシャルメディアを利用している若者にはこの禁止令は適用されないと述べた。
親の同意を得ている子供については、年齢制限の適用除外はない。政府は、アクセスを防止するために適切な措置を講じていることを示す責任は、プラットフォーム側にあると述べている。
アルバニージー首相は、ユーザーに対する罰則はないとし、法律の適用はオーストラリアのオンライン規制当局である「eセーフティ・コミッショナー」が担うと述べた。
この法案は可決後12カ月で発効し、施行後には見直しも行われる。
ほとんどの専門家は、SNSが青少年のメンタルヘルス(こころの健康)に悪影響を及ぼす可能性があることに同意しているが、それらを一括して違法化することの有効性については意見が分かれている。
一部の専門家は、複雑なオンライン空間を切り抜ける方法を教えるのではなく、使用を禁止するという措置は、10代の若者たちがTikTokやインスタグラム、フェイスブックと言ったアプリに触れるのを遅らせるだけだと指摘している。
これまでにも欧州連合(EU)などでSNSへのアクセス制限が試みられているが、おおむね失敗に終わっているか、テクノロジー企業からの反発に直面している。また、年齢認証要件を回避できるツールがあることを考えると、法律の効果については疑問が残る。
オーストラリア最大の子供の権利擁護団体のひとつ、「オーストラリア子供の権利タスクフォース」は、この提案された禁止措置を「あまりにも乱暴な手段」と批判している。
同団体は10月に政府に公開書簡を送付。100人以上の学者と20の市民団体が署名したこの書簡はアルバニージー首相に対し、禁止措置に代えてSNSプラットフォームに「安全基準」を課すことを求めた。
同団体はまた、国連の助言を引用し、オンライン空間を規制するための「国家政策」は、「子供たちがデジタル環境と関わることで利益を得る機会を提供し、その安全なアクセスを確保することを目的とすべきだ」と指摘した。
一方で、有害なコンテンツや誤った情報、いじめ、その他の社会的圧力から子供たちを守るために禁止措置が必要であるとして、豪政府にこの法律の制定を働きかけている草の根運動家たちもいる。
「36カ月」という取り組みをしているグループは、12万5000筆以上の署名を集めた嘆願書で、少なくとも16歳までは「子供たちはオンラインのソーシャルネットワークを安全に利用できる状態にない」と主張。現在「過剰なソーシャルメディアの利用が、心理的発達の重要な時期にある若い脳に影響を与え、精神疾患の蔓延(まんえん)を引き起こしている」としている。
アルバニージー首相は、インターネットで得られる利益とリスクについて、子供たちに教育する取り組みをより広範に展開すべきかという質問に対し、そうしたアプローチは「対等な力関係を前提としている」ために不十分なのだと述べた。
同首相は記者団に対し、「他の人の例は知らないが、私の(インターネット)システムには見たくないものが表示される。立場の弱い14歳は言うまでもない」と語った。
「テクノロジー企業は非常に強力だ。こうしたアプリには、人々を特定の行動に駆り立てるアルゴリズムがある」