マーク・ポインティング気候変動・環境調査員
欧州の気象当局はこのほど、猛烈な熱波や多くの犠牲者につながった嵐が世界各地を襲った2024年が、統計開始以来で最も気温の高い年となることが「ほぼ確実」となったとの見通しを発表した。
欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、今年の世界平均気温は、人類が化石燃料を大量に燃やし始める前の「工業化以前」と比べて摂氏1.5度以上高くなる見込み。
こうした高気温は、主に人為的な気候変動によるもので、エルニーニョ現象のような自然要因による影響は小さいという。
科学者たちは、来週アゼルバイジャンで開かれる国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)を前に、これを警鐘として受け止めるべきだと指摘している。
英王立気象協会の最高責任者、リズ・ベントりー氏は、「この新記録は、COP29に参加する各国政府に対して、これ以上の温暖化を制限するための行動が急務だと、厳しい警告を新たに発するものだ」と話した。
2024年には、10月までの世界気温があまりに高かったため、最後の2カ月間で気温があり得ないほど急降下しない限り、新記録の樹立は防ぎようがないもようだ。
実のところ、欧州コペルニクス気候変動サービスのデータによると、2024年は工業化以前と比べて、少なくとも1.55度は気温が高くなる可能性が高い。
「工業化以前」とは、1850~1900年を基準にした期間のこと。この期間は、人間が化石燃料を大量に燃焼させるなどして地球温暖化を大幅に促進する以前の時代と、ほぼ一致している。
欧州当局の今回の予測によると2024年は、昨年更新されたばかりの1.4度という最高気温を上回る可能性がある。
コペルニクス気候変動サービスのサマンサ・バージェス副ディレクターは、「これは地球の気温記録における新しい一里塚になる」と話した。
加えて、コペルニクスのデータによると2024年には初めて、1月1日から12月31日までの1年の平均気温が1.5度上昇することになる。
これは象徴的な意味を持つデータだ。2015年のパリ協定では200カ国近くが、気候変動による最悪の影響を回避しようと、長期的な気温上昇を1.5度未満に抑えるようにすると約束したからだ。
ただし、今年に1.5度という上限を超えても、パリ協定の目標が破られたということにはならない。パリ協定の規定は、自然の変動を平均化するため、20年程度の期間における平均気温として定められているからだ。
しかし、1年ずつ上限突破が積み重なるごとに、長期的には1.5度のラインに近づいていくことになる。国連は先月、現在の政策のままでは今世紀中に世界は3度以上も温暖化する可能性があるという警告を発した。
2024年データの細かい中身も、懸念材料となっている。
2024年初頭の温暖化は、自然現象のエルニーニョ気象によってさらに拍車がかかった。これは、南太平洋で温かい海水が海面まで上昇し、大気中に暖かい空気を押し出される現象だ。
直近のエルニーニョ現象は2023年半ばに始まり、2024年4月頃に終息したが、それ以降も、気温は依然として高い状態が続いている。
コペルニクスのデータによると、この1週間、世界の平均気温は毎日、この時期の最高記録を更新している。
多くの科学者は、エルニーニョ現象の反対で、海面水温が低下するラニーニャ現象が間もなく発生すると予測している。理論的にはこの現象により、来年には地球の気温が一時的に低下するはずだが、その正確な推移は不明だ。
英レディング大学のエド・ホーキンス教授(気候科学)は、「2025年以降に何が起こるのか、興味深く見守っていきたい」と話す。
しかし、大気中の温室効果ガス濃度は依然として急速に上昇しており、科学者らは新たな記録が更新されるのは時間の問題だと警告している。
「気温の上昇によって嵐はより激しくなり、熱波はさらに暑くなり、豪雨はますます極端になる。その結果、世界中の人々に、目にもあらわな影響が出るはずだ」とホーキンス教授は言う。
「炭素排出量を差し引きゼロにするネットゼロを実現し、地球の気温を安定化させることが、こうした災害被害をこれ以上増やさない唯一の方法だ」