アメリカのジョー・バイデン大統領は7日、ドナルド・トランプ次期大統領への「平和的で秩序ある政権移行」を確実に実行すると誓った。
バイデン氏が5日の大統領選の後に公の場で発言したのは初めて。ホワイトハウスのローズガーデンで、「私たちはこの国の選択を受け入れる」、「自分たちが勝った時だけ国を愛するといったことは認められない」と述べた。
また、自らが大統領選から離脱した後、「人々を奮い立たせる」選挙運動を展開したとして、カマラ・ハリス副大統領に敬意を表した。
今回の選挙戦は、ハリス氏がトランプ政権は民主主義の脅威になると主張し、トランプ氏が現在のアメリカを「衰退する国家」、「失敗した国家」と呼ぶなど、荒涼としたものとなった。そのため、バイデン氏はこの日、安心感を与えるメッセージによって融和的な雰囲気を高めようとした。
バイデン氏は、アメリカの民主主義は「世界で最も偉大な自治の実験」であり、「常に民意が優先される」と述べた。
また、「私たちはこの戦いに負けた」としたうえで、「あなたが夢見るアメリカは、あなたに戻って来るよう求めている」と話した。
ハリス氏の敗因となったかもしれない経済については、「世界最強の経済」と「1兆ドル以上の規模のインフラ整備の完了」を置き土産にしていく自らの「歴史的」な任期を、支持者は誇りに思うべきだと主張。「人々がまだ苦しんでいるのは知っている。だが、状況は急速に変化している」と述べた。
今回の大統領選では、激戦州の有権者らは経済を最も重要な問題に挙げていた。トランプ氏は選挙集会で、インフレ率が2022年6月に40年ぶりの高水準まで達したのは、バイデン氏に直接の責任があると訴えた。
政権移行については、バイデン氏はトランプ氏のチームと滞りなく協力することを約束した。そして、国内の「温度を下げる」時だと述べた。
また、2020年大統領選でトランプ氏が不正があったとして負けを認めず、翌年1月6日の連邦議会襲撃事件につながったことを念頭に、「アメリカの選挙制度の完全性についての疑問を解消できると思う」、「それは正直であり、公正であり、透明性があり、信頼できるものだ。勝敗にかかわらずだ」と述べた。
民主党で大敗の「責任者」探し
民主党では、共和党のトランプ候補に大敗した「責任者」探しが始まっている。
非難の多くはバイデン氏に向けられている。もっと早く選挙戦を降りるべきだったという声や、そもそも81歳の人物が2期目を目指すべきではなかったという声も出ている。
バイデン氏は結局、投票日まで3カ月余りになって撤退を表明。1968年のリンドン・ジョンソン大統領以来、再選を争わなかった最初の現職大統領となった。
ハリス氏についても、メディア出演をうまくこなせなかった弱い候補者だったとする見方も出ている。また、選挙運動に関して、有名人の関与が大きかったが、政策の中身は薄かったとの批評も出ている。
共和党下院議長を務めたケヴィン・マカーシー氏らは、ハリス氏が副大統領候補として、若々しいユダヤ系の穏健派のジョシュ・シャピロ・ペンシルヴェニア州知事ではなく、年配で進歩派のティム・ウォルズ・ミネソタ州知事を選んだのが間違いだったと指摘している。
2016年と2020年に民主党の大統領予備選に挑んだ無所属のバーニー・サンダース上院議員は、長文の声明を発表し、民主党が労働者を見捨てていると非難。「民主党指導部は現状を擁護するが、アメリカ国民は怒り、変化を求めている」、「そして、そうした人々は正しい」とした。
民主党穏健派のリッチー・トーレス下院議員(ニューヨーク州)は、党内の極左勢力が「歴史的な数のラティーノ(中南米系)、黒人、アジア系、ユダヤ系を民主党から遠ざけた」と非難した。
(英語記事 Biden promises 'peaceful transfer of power' amid Democratic blame game)