アメリカのジョー・バイデン大統領は26日、イスラエルと、レバノンのイスラム教シーア派ヒズボラとの13カ月にわたる戦闘を終結させる停戦が合意されたと発表した。合意は現地時間27日午前4時(日本時間27日午前11時)に発効した。
合意の履行を監視するアメリカとフランスは共同声明で、この合意によってレバノンでの戦闘が停止され、「イスラエルがヒズボラやその他のテロ組織の脅威から守られる」と述べた。
合意はどんな内容なのか。公式発表や報道から得られた情報をまとめた。
停戦は「恒久的なもの」になるとバイデン大統領
バイデン氏は記者会見で、「恒久的な停戦」を目指していると述べた。
停戦の条件として、ヒズボラは60日間にわたり、ブルーライン(国連が設定したレバノンとイスラエル、イスラエル占領下のゴラン高原を隔てる非公式な境界線)から北に約30キロのリタニ川までの地域から、戦闘員と武器を引き揚げる。
アメリカ政府高官は、ヒズボラの戦闘員はレバノン国軍の兵士に置き換えられ、同地域からはヒズボラ関連のインフラや武器が撤去され、再建できないようにすると説明した。
一方バイデン氏によると、イスラエルは同じ60日間で、残りの軍と民間人を徐々に撤退させる。これにより、境界線の両側で民間人が自宅に戻れるようになるという。
ヒズボラに代わりレバノン兵5000人が展開
アメリカ政府高官によると、今回の合意により、レバノン軍は同国南部に5000人の兵力を展開することになるという。
しかし、停戦の履行におけるレバノン軍の役割や、必要に応じてヒズボラと対峙(たいじ)するのかどうかについては疑問が残る。ヒズボラと対峙することになれば、宗派間の対立が根深いこの国で、緊張を悪化させる可能性がある。
レバノン軍も、資金や人員、装備といった資源が不足しており、この合意に基づく義務を果たすことができないと述べている。ただし、友好関係にある国々から支援があれば、この問題は軽減される可能性がある。
多くの欧米政府高官は、ヒズボラが弱体化している今こそ、レバノン政府が全土の支配を再確立する好機だと述べている。
誰が停戦履行を監視するのか
今回の合意は、2006年のイスラエルとヒズボラの間の戦争を終結させた国連安全保障理事会決議第1701号をほぼ踏襲している。
この決議はレバノン南部の地域について、レバノン国軍および国連レバノン暫定軍(UNIFIL)以外の武装した人員や武器が一切存在しない状態を求めている。
しかし、イスラエルもレバノンも、互いの決議違反を主張している。
イスラエルは、ヒズボラがこの地域に広範なインフラを建設することを許されたと主張。レバノンは、イスラエルの違反行為には軍用機をレバノン領空で飛行させたことも含まれていると指摘している。
米高官によると、今回はアメリカとフランスが、UNIFILとレバノン、イスラエルによる既存の三者間メカニズムに加わり、違反行為の監視を行うという。
この高官は、「この地域に米軍の戦闘部隊は配置されないが、これまでと同様、レバノン軍に対する軍事支援は行われる。ただし、今回はレバノン軍が主体となり、フランス軍とも連携して行われることになるだろう」と話した。
イスラエルの懸念について、バイデン大統領は、「レバノン南部では、テロ組織ヒズボラのインフラ再建は許されない」と述べた。
イスラエルは反撃権を主張
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、同国が「アメリカの全面的な理解を得た上で」、レバノンでの「軍事行動の完全な自由を維持する」と述べた。
ネタニヤフ氏は、「ヒズボラが合意に違反し、武装しようとした場合、我々は攻撃する。境界付近でテロのインフラを再構築しようとした場合、我々は攻撃する。ロケット弾を発射した場合、トンネルを掘った場合、ロケット弾を積んだトラックを侵入させた場合、我々は攻撃する」と断言した。
バイデン大統領もこの見解を支持し、記者団に対して「ヒズボラやその他の勢力が合意を破り、イスラエルに直接的な脅威をもたらすのであれば、イスラエルには国際法にのっとった自衛の権利がある」と述べた。
一方でバイデン氏は、この合意がレバノンの主権を維持するものでもあるとも述べた。
イスラエルの反撃権の要求はレバノンによって拒否されたため、停戦合意の一部ではないと考えられている。この問題を回避するため、アメリカがイスラエルの行動権を支持する書簡を発行する可能性を示唆していると報じられている。