肩透かしに終わった習近平バズーカ
いったい、何がこの熱狂をもたらしたのか。
きっかけとなったのは中国政府の「大型景気対策への期待」だ。
9月24日の中国人民銀行、証券監督管理委員会、国家金融監督管理総局合同の記者会見が開催され、広範な株価対策、金融緩和、不動産対策が発表された。26日には中国共産党政治局会議が開催されたが、「経済運行に新たな状況と問題が出現している」「不動産市場の下落と安定回復を促進しなければならない」と苦境を認め、対策を打ち出す文言が盛り込まれた。
その後も、10月8日に国家発展改革委員会、12日に財政部、17日に住宅都市農村建設部と各省庁が相次ぎ記者会見を開き、個別の景気対策を発表している。矢継ぎ早に繰り出された景気対策の効果が期待されて株価上昇につながったというよりも、「ここまでやる気を見せるのならば、この後にすごい景気対策が出てくるのではないか」という期待が高まったことが大きい。
その、すごい景気対策として期待されていたのが大規模な財政出動だ。過去の中国共産党の政策を見ると、減税や社会保障給付の拡大はなかなかなさそうだが、公共事業の拡大ならば期待できそうではないか。08年のリーマンショック当時には4兆元(当時のレートで約60兆円)対策で中国経済は沸騰したが、その再来があるのではないかというわけだ。
11月4日から8日にかけて開催された全人代常務委員会で大型財政出動が可決されるはず。その規模は4兆元だ、いや6兆元だなどと噂が飛び交った。
ところが蓋を開けてみると、意外な結果が待っていた。今後5年間で10兆元(約210兆円)の地方債を発行するという、金額だけ見ればすさまじいボリュームとなったのだが、このうち6兆元は隠れ債務を地方債に置き換えるために使われる。この分は景気浮揚の効果はゼロだ。残る4兆元は財政出動となるが、5年間に分割するため、1年あたりの額は8000億元に過ぎない。
6兆元が来るのか?! と手に汗握っていたところに、発表は10兆元だけど実質は8000億元という、なんとも反応しづらい結果が出た。
トランプ新政権で潮目は変わるか
12月8日、9日の両日にかけて開催された中央経済工作会議も同じく微妙なものとなった。まだ公式コミュニケは公開されていないが、25年の経済成長目標を今年と同じく5%前後に設定すること、財政赤字を現行の国内総生産(GDP)比3%から拡大すること(3.5%~4%との予想が多い)が決議されたと報じられている。財政拡大の方針が示されたが、“バズーカ”的な巨額出動ではない上に、詳細が明らかにされるのは来年3月の全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)まで待つ必要がある。