2024年12月23日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年12月23日

 トランプ側近は「競争相手とも開かれた対話を生み出そうとしている」とするが、これは本意でもあろう。これまでもトランプは、貿易不均衡や化学合成麻薬流入などの対中問題で不満を表し、制裁的高関税の導入を公言してきた。一方で習については、「14億人を鉄拳で支配する好悪はさておき、素晴らしい人物」(10月)と評し、また「新型コロナウィルス流行までは良い関係だった」、「中国とはあらゆる課題を共に解決できる」(12月)と述べている。

 すなわち習への招待は、首脳間関係の再構築が狙いであり、一戦を前に「ライバルに敬意を表する」というアメリカ的フェアネスを示すジェスチャーとも言える。

中国側の思惑

 だが習近平招待の報道から間もなく、中国外務省は「公表できる情報は無い」(12日)とし、アメリカの各メディアも、習の出席は実現しない見込みと報道した。この中国側の反応は当然とも言えた。

 すなわち中国の感覚からすれば、トランプの就任式に列することは「臣下の礼」を取ることに他ならず、習は反米感情の強い国民世論からの誹りを免れないであろう。トランプが目論む首脳間関係の再構築については、習も望むところではあろうが、それはトランプの大統領就任後であっても機会を設ければ可能なことである。

 むしろ中国は、トランプ政権始動後の対中政策を観察し、アメリカへの対応を決める腹積りであろう。中国にとっては、すでに固まりつつあるマルコ・ルビオ国務長官候補、マイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)候補など、外交・安全保障面で筋金入りの対中強硬派が主導権を握ることは、すでに大きな懸念となっている。

 一方の経済面では、通商・製造業担当の大統領上級顧問に対中強硬派のピーター・ナバロが就任するが、国内外の経済政策の決定に関与する国家経済会議の委員長には自由貿易主義者のケビン・ハセットが就任予定で、対中政策は不透明である。むしろ通商政策全般はトランプ自ら主導する目論見と思われ、そこに対中利権を持つイーロン・マスクという変数が絡み、混乱が予想される。

 いずれにしても中国には、バイデン政権の対中アプローチである「管理された競争」の方が、予見可能な範囲で推移するため容易であった。しかしトランプ政権では、思わぬ事態や反応が飛び出すリスクが高い一方、トランプ個人の意向が大きく影響することに加え、マスクなどの人物を利用して付け込むことも可能になる。

 このため中国も、どのように対応するかは今後の推移次第であろう。今のところ、「新政権が正しい選択をし、互恵的協力で混乱を排除し、障害を克服することを期待する」(17日の王毅外相発言)と述べるにとどまっていることは、象徴的である。


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