2024年12月23日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年12月23日

日本は読み間違いをしてはならない

 同時に中国は、米国以外の国々との関係改善・強化という緩和策を用いようとしている。特に「アメリカ第一主義」を標榜するトランプの矛先は中国だけでなく、アメリカの同盟国にも向けられつつある。

 こうした中で、その累は、日本、欧州連合(EU)、英国、カナダといった主要同盟相手にも及ぶことが予想され、警戒を招いている。一方で中国は、自由貿易の旗手のようにその堅持を訴えつつ、グローバルサウスの取り込みだけでなく、日本を含めたアメリカの同盟国との関係改善を図ることで、対米関係が悪化した際の打撃緩和を目論んでいる。

 これはバイデン政権下で構築の進んだ、国際的な対中包囲網を突き崩すものでもある。例えば、経済成長の必要に迫られている英国は、すでにスターマー首相率いる労働党政権が対中姿勢を軟化させつつある。また中国は、オーストラリアへの貿易制裁措置を撤廃し、EU各国には個別アプローチを継続して関係改善を図っている。

 そして日本にも、懸案となってきた短期滞在ビザ規制問題や水産物輸入規制の緩和姿勢を見せ、呼応するように対中関係改善を要望する日本経済界も相次いで訪中するなど、融和的態度を見せている。

 だが言うまでもなく、中国の姿勢軟化は、トランプ政権下での対米関係悪化に備えた打算であり、長期的に継続しない。むしろ慎重に熟慮すべきは、中国に安易に呼応する日本を、アメリカの党派を超えた朝野がどのように認識するかである。

 ひとたび日本の同盟国としての信頼性が毀損すれば、その認識は次期政権だけでなく、後々の党派を超えた政権に継続し、経済上・安全保障上の悪影響は長期にわたる。アメリカを必要とするのは日本で、それはアメリカが日本を必要とする理由をはるかに上回るのが、日米間の厳然たる現実である。

 このように考えれば、日本が無思慮かつ軽々に中国との関係改善を図ることは、決して好ましい戦略ではない。むしろ将来のアメリカでの揺り戻しを見据えつつ、できるだけ「静かな4年間」をやり過ごすことが、日本にとっては最善かつ確実の道であろう。

※本文内容は筆者の私見に基づくものであり、所属組織の見解を示すものではありません。

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