一つには、中国が恐らく、米国と日本が台湾の援護に駆けつけると想定するためだ。日米両政府の声明は実際、そのような見方を裏付ける。
さらに、中国の射撃訓練を撮影したオープンソースの衛星写真には、在日米軍だけでなく、日本の自衛隊だけが運用している航空機のレプリカも写っている。日本は中国の軍隊に関心がないかもしれないが、中国軍の方は日本に関心があるのだ。
もちろん、中国は日本を併合したいとは考えていないだろう。だが、中国政府が日本を自国のアジア覇権の下に置きたいと考えていることは妥当な想定だ。
この構想では、日本は中国の支配の歯車の一つ、中国の太陽に対する経済的、地政学的な月になる。これは間違いなく、今ほど自由ではなく、繁栄が後退し、危機的状況の日本を意味する。
さらに、歴史と中国の国民心理を考えると、中国政府が日本のために特別な屈辱を用意している可能性が高い。筆者は日本人を代弁するつもりはない。だが、もし自分が日本人だったら、こうした事態は何としてでも避けたいところだ。
「単独」での対峙は困難
再認識すべき日米同盟の重要性
その意味で、日米同盟がかつてないほど重要になる。単独で強大な中国に立ち向かうには、日本は規模が小さすぎる。だが、単純な事実を言えば、米国も単独では中国と対峙できない。
過去1世紀半に米国と対立したどんな競合国とも異なり、中国の経済規模は米国と肩を並べる規模になった。その間にも、米国は他の地域に注目し、多くの資源を浪費し続けている。賢明ではないが、これが残念な現実である。
その結果、米国は、中国がアジアにおける地域覇権を握ることを阻止するための支援を必要としている。中国を支配する、あるいは崩壊させるという話ではない。米国はただ、アジアにおいて妥当かつ持続可能な勢力バランスを確立するための支援を求めている。
そうしたパワーバランスが存在すれば、日本などが強い立場から中国と交渉できる。そうでなければ、われわれは皆、中国政府のなすがままになる。
他国も当然、こうしたパワーバランスを達成するために一定の役割を果たせるが、日本の役割が肝心だ。豪州はすでにその役割を果たしているが、規模が日本の数分の1にとどまる。インドは非常に強力な軍を持つが、関心が自然と南アジアに向く。韓国の軍隊も強いが、北朝鮮、中国双方からの脅威に見舞われ、すでに手いっぱいだ。アジアの安全保障に対する欧州の貢献は、取るに足らないものではないにせよ、象徴的なものにとどまる。小さな台湾は自国の防衛に集中しなければならない。東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国は軍の能力が相対的に低く、一般論として、争いに巻き込まれないよう鳴りを潜めている。
そうした中、世界第3位の経済大国である日本がいる。旧友として、ここは正直に言わせてもらおう。集団的防衛はおろか自国の防衛に対しても、日本の貢献は嘆かわしいほど不十分だ。日本は莫大な国内総生産(GDP)の1%強しか防衛に費やしておらず、その比率は米国や韓国、台湾、豪州、インドに遠く及ばない。
この状況は持続不能であり、主に二つの理由から著しく危険だ。
第一に、沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ「第一列島線」に沿った同盟国の集団的防衛を軍事的に現実的なものにするためにも、日本が防衛費を増やし、対策を強化する必要がある。日本が努力をかなり強めない限り、米国と他の同盟国だけでは人民解放軍に対抗するリソースを欠く。何しろ人民解放軍は、巨大で今後も成長する見込みの中国経済によって財源が賄われている。これは単純な算数の問題だ。
第二に、防衛を強化できない日本は、日米同盟の崩壊を招くリスクを冒す。米国民の間で日本は無気力で不公平だという認識が生まれるためだ。ここで米国民が毎年、所得の3.5%以上を防衛に費やしていることを心に留めてもらいたい。それにもかかわらず、米国の防衛努力の大部分は同盟国の防衛に割かれている。米国本土は厳重に守られているからだ。