2025年1月4日(土)

World Energy Watch

2024年12月30日

ロシアのウクライナ侵攻が変えたEUのロシア依存

 2000年代に2度にわたるロシア産天然ガスの供給中断を経験したEU諸国の中からは、ロシアのエネルギーへの過度な依存を警戒しロシアへの依存度引き下げの声も出たが、EU内でのエネルギー自給率の下落が続き、ロシアへの依存度が下がることはなかった。

 90年に50%だったEUのエネルギー自給率は、19年には39.5%まで落ち込み、輸入燃料への依存度が高まる中でロシア産化石燃料の輸入も増加した。

 20年の段階でEUの全エネルギー消費に占めるロシア産化石燃料への依存度は発熱量ベースでは24.4%になっていた。

 全消費に占めるロシア産燃料への依存度は、天然ガス41.1%、原油25.9%、石油(原油と石油製品)36.5%、石炭19.3%。ロシア産化石燃料がEU経済と家庭を支えていたと言える状況だった(図-2)。

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、EUはロシアに対する制裁として石炭、原油、石油製品の輸入を、それぞれ22年8月10日、22年12月5日、23年2月5日に禁止する措置を取った(パイプラインで東欧諸国に輸出される原油については例外となったが、ロシアのEU向け石油輸出額の約1割に過ぎない)。しかし、ロシアへの依存度が高く、しかも安価なロシア産天然ガスの代替は難しかった。

難しいロシア産天然ガスの禁輸

 欧州委員会(EC)は侵攻後の22年5月に脱ロシア産天然ガスの目標年を27年に設定した。しかし、法的な義務はなく「27年が達成可能であり、経済的に受け入れ可能な目標年」とされている。

 EUは、米国、カタールなどからのLNG輸入量増を通し段階的な削減を進めている。しかし、ロシア産天然ガスの輸入量は減少していたものの、23年を底に上昇に転じており、24年10月にECは、「24年上期のロシアからの輸入増が構造的な傾向になってはならない」と懸念を表明している。

 24年1月から9月までの実績では依然としてロシア産パイプライン天然ガスはEU輸入量の11%のシェアを占めている。ロシア産LNGを含めるとロシアのシェアは約18%になる(図-3)。 

 一部の中東欧諸国がロシア産天然ガスの削減に苦心し、ロシア依存度が下げ止まっている最大の理由は、競争力のある価格にある。

ウクライナ経由の天然ガスに依存する中東欧国

 ウクライナ・ナフトガスはロシア・ガスプロムとの間で、EU向け天然ガスの輸送契約を締結している。09年の供給中断の紛争後、長期契約が締結され、その後19年に新たに5年間の輸送契約が締結された。

 06年のウクライナ経由のEU向け輸送量は1300億立方メートル(130BCM)、LNG換算約1億トンあった。中国と輸入量世界一を争う日本の年間LNG輸入量約7000万トンを上回る数量だ。


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