2025年1月9日(木)

プーチンのロシア

2025年1月7日

 トランプ氏は大統領選挙期間中、バイデン政権によるウクライナに対する過分な支援を批判するロジックで米国民の支持を集めた。当然、トランプ政権になればウクライナ支援は縮小するが、一方で長期の返済義務が伴う融資という形であれば、一定規模の支援が続く可能性がある。

 米国の軍需産業にとっても、現在のウクライナ戦争は自国の犠牲者を誰も出さずに自国兵器の市場を広げているという点でメリットがあるとする指摘もある。現在の米露交渉が仮に妥結しなかったとしても、それはトランプ政権にとって死活的な政治的失敗とはいいがたい。トランプ氏はタイム誌のインタビューでも、「ロシア・ウクライナの問題は、中東問題よりはるかに解決が困難だ」とも指摘しており、長期の交渉を見越している可能性もある。

ロシア社会で浮き彫りになるひずみ

 さらなる戦闘の長期化は、ロシアにとり好ましいとはいいがたい。戦争開始から3年を経て、制裁に対応してきたロシア社会ではあるが、ひずみも鮮明になりつつある。

 2024年の経済成長率が3.6%と予想されるロシア経済は25年、1.3%成長に減速すると予想される。背景には軍事侵攻の長期化に伴う労働力の逼迫や、米国の制裁に伴う通貨ルーブルの下落などがある。米財務省は昨年11月、エネルギー資源の輸出入をめぐる決済を取り扱っていたため、制裁対象外であったガスプロムバンクの制裁に踏み切ったことで、ルーブルは侵攻開始直後の水準にまで落ち込んだ。

 インフレも加速し、現在は約9%の水準で推移する。人手不足による人件費の高騰などが主要因だ。さらに、そのインフレを抑え込むために政策金利は実に20%超という高水準となっている。ロシア企業の不満は強い。

 制裁下のロシア経済の好調さは、国防費の急激な増大も大きな要因となっている。現在、ロシアは旧ソ連時代に匹敵する規模の支出を国防費に振り分けており、それによって国内景気が活性化している実態がある。

 ただ、このような投資は永続性があるものではなく、戦争が終われば縮小を余儀なくされる。現在プーチン政権が制裁に対抗するために進めている自国産品による輸入代替政策も、自国産業を国際市場の競争環境から閉ざすことにつながっているため、いざ停戦して通常の通商環境が再開されると海外産業と直接競争に見舞われるため、ロシアの産業は太刀打ちできない可能性が高い。戦時経済体制の弊害が色濃く残ることは間違いない。


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