世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月16日

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 中央政府は、毎月、「環境法執行週間」を設ける一方、今後5年間、大気汚染を抑えるために2750億ドルを費やし、北京と他の2つの産業中心地で大気汚染を15~25%減らす、と言っている。大気汚染に対して「めざましい進歩」を遂げた都市や地域への特別基金により、地方政府は、経済成長と環境保護をバランスさせるインセンティブを持つであろう。この基金は、8兆ドル規模の経済において、16.5億ドルとなる見込みである。

 汚染を続ける政治的誘因があるので、中国の大気汚染が、これらの手段によって浄化されるかは疑わしい。中国は、今日、急速な経済成長の必要性に対して、ある程度の汚染を容認する必要があるのかもしれないが、北京が引いた線に大衆が不満を募らせていることは明白である。

 中国が、民主的説明責任、市場への説明責任をもっと発展させなければ、習は、次回大衆の中を歩く時は、マスクを着用したいと思うかもしれない、と論じています。

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 民衆の要求を掬い上げる民主的政治システム、法の支配、汚染を外部不経済とする正常な市場原理が無ければ、環境破壊を止めようという決定的なインセンティブが働き難いという社説の指摘は、その通りです。

 中国共産党の唯一の正統性は、これまでは、経済成長であり、それによって都市部の中産階級の支持を得てきましたが、「空気末日」とまで言われる酷い大気汚染は、都市部を直撃しており、こうした中産階級の離反の大きな原因となり得ます。まして、経済成長は鈍化しつつあります。そして、1960~70年代の欧米や日本との決定的な相違は、人権意識の有無です。中国の環境破壊は、共産党支配を揺るがし得る潜在的要因であることに間違いはありません。

 ただ、中国が衰退するかどうかは、国際情勢判断上最大の課題の一つですが、環境問題が中国の衰退に直結すると賭けることには、躊躇を覚えます。まず、環境問題が中国衰退に繋がるというのは、あくまでもそういう可能性があるということであり、その予測に基づいて戦略を立てるのはリスクが大きすぎます。

 そして、独裁国家の本能として、自ら滅びるのを座視するとは考えられません。環境問題は、複雑な経済政策と違って,技術と経費を投入すれば解決します。独裁国家である中国が、衰退か環境対策投資かの選択に直面して衰退を選ぶはずはないであろうという、常識に基づいた判断は十分成り立つでしょう。そうなれば、政府資金が大量に投入されることが予想される、中国の環境問題は、一大ビジネスチャンスにもなり得るように思います。

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