2024年12月14日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月16日

 ウォールストリート・ジャーナル紙が、3月4日付の社説で、中国の環境汚染の酷さを報告し、その原因は、一党支配、政府主導の経済、法の支配の欠如であり、改善は困難であろう、と指摘しています。

 すなわち、習近平は、「空気末日(“airpocalypse”:酷い大気汚染)」の中、北京近辺を散策した。習は、住民に混じり、カメラに向かってポーズをとり、スモッグ用のマスクをあえて着用しなかった。「共に呼吸し、運命を共にしよう」とのメッセージを発したかったのである。

 中国政府は、息苦しい空気、安全でない水、毒の入ったコメに対する大衆の不満を逸らそうとする努力を続けている。問題は、北京が、環境破壊の主因である、説明責任を果たさない一党支配を変える計画が無いことである。

 米科学アカデミーの見積もりによれば、重工業の集中している中国北部では、大気汚染が、平均寿命を5.5年縮めている。上海社会科学院は、先月、北京の空気は、人間にとって「辛うじて適している」と警告した。ハルビンでは、最近、スモッグで視程が10メートル未満となり、乗り合いバスがルートを見失った。中国の農地の最大20%が重金属に汚染されているかもしれない、という見積もりもある。その原因の一部は、農民が、中央の計画の指示を満たすために、化学肥料を過剰に用いたことである。広州市の当局者は、昨年、コメのサンプルの44%がカドミウムに汚染されていることを発見した。

 こうした環境悪化は、偶然のものでも、急速な経済成長の当然の結果でもなく、中国の政治に起因する。

 まず、北京の政府主導の経済は、企業が市場経済の中で環境に良い行動をとろうとするインセンティブを弱める。自由な市場経済では、汚染は、企業がコストとして計算すべき外部不経済であるが、中国では、汚染は、政治的取引の一部である。

 企業は、しばしば補助金を貰い、原料や資本に安い価格しか払わないので、無駄を削減する動機が小さくなる。企業は、環境規制への違反に対してはほとんど罰を受けないが、経済的目標を達成できなかった場合にはより大きな厄介に直面することを知っている。これは、同様に環境が悪化した、ソ連、東独と同じパターンである。

 そして、法の支配が欠如している。市民が、汚染による被害を受けたと感じ、法廷で賠償金を得ようとしても、特に汚染者が地方政府や中央政府と結びつきのある大企業であった場合は、苦戦を強いられる。

 一方、市民を恐れる政治システムにおいては、汚染に焦点を当てる活動家は、インターネット、特にソーシャル・メディアを検閲しようとする当局と、衝突し得る。北京の検閲官は、上海社会科学院の大気汚染にするレポートへの言及を消し去ろうとした。これは、環境についての不都合なニュースを取り締まろうとしてきた歴史の一部である。


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