世界的に資源開発意欲が減退している。これまで世界の経済を牽引してきたのは中国だが、経済が伸びきったのか、一時の勢いはない。中国税関によれば2月の輸出は18%減となった。それでも中国政府は経済成長の鈍化によって大衆の不平不満が表面化することを恐れて、経済の抑制政策はとっていないようにみえる。
習近平政権は経済発展を7%台に維持するべく、地方の経済開発を進めている。同時に地方分権も行っているが、その結果、地方政府による計画性のない生産増強を中央政府はコントロールすることができなくなっている。
例えば、中国の鉄鋼の余剰在庫は現在かなりの数量に上るといわれている。鉄鋼生産能力は、日本の鉄鋼生産量の約10倍で、生産過剰量は3億トンにも上るという。日本の鉄鋼生産量が約1億トンだから、異常事態だといえる。
レアメタルの世界でも地方分権によって生じた動きがあった。金属取引所の設立ラッシュだ。この数年で、雲南省昆明、広西省南寧、河北省天津と相次いでレアメタル取引所が設立された。レアアースについても、内モンゴルの包頭に取引所の設立が進められている。
特に昆明の泛亜有色金属取引所は、主要株主が、レアメタルとは無縁の国営・雲南航空公司と複数の地場の企業である。昨年、この取引所のインジウム相場が、実需の動きから離れて、ジリジリと上昇し始めたのである。いうまでもなく、投機マネーの流入によって起きた動きだ。
レアメタルは、市場規模が小さい。そのため、レアメタル資源大国である中国によって価格操作が行われることも、しばしばある。実際、中国の保有量から換算すると、日本の経済産業省が定めている32のレアメタルの半分以上について、中国は価格操作をすることが可能だ。2010年に尖閣諸島の問題で、中国がレアアースの輸出禁止を決定した結果、市況が大暴騰したのはその典型例だ。