本コラムでは、筆者も今までさまざまなテーマに即して自分なりの中国分析を行ってきた。今回の原稿は少し趣旨を変えて、別の書き方で中国情報を伝えようと思う。筆者が色々な中国情報を素材に使って分析を行うのではなく、むしろ素材を素材のまま伝えることで、今、中国で何が起きているのかを伝えたい。
各地で暴力、腐敗事件
たとえば、今年の8月と9月に中国で起きた下記3つの事件を見ただけでも、中国社会の嘆くべき現状がよく分かる。
8月28日、中国の各メディアは、内陸都市の蘭州という町の真ん中で起きた事件を伝えた。一人の男がバスの停留所で人前も憚らず堂々と立ち小便したところ、周りの人々がいっせいに怒り出して、「小便男」を殴ってついには殺してしまった。傍若無人のマナー違反と白昼堂々の暴力が罷り通るこの国、社会秩序はもはや崩壊寸前ではないのか。
9月19日、天津市の地元紙「天津日報」が報じたところによれば、中国天津市の一部の病院の産婦人科で、看護師が親に断りなく、新生児にある特定メーカーの粉ミルクを勝手に飲ませていたことが発覚したという。なぜそんなことが起きているのかというと、要するに看護師たちはこのメーカーからリベートをとっていただけの話である。この国では、「腐敗」はもはや一部高官の特権ではない。社会の末端にまで広がっているのである。
そして9月20日、次のような吃驚仰天の事件も発生した。北京市海淀区のある病院で、階段から転んで怪我を負った人が、「先払いのお金がない」との理由で診療を拒否された。患者が抗議すると、医者が暴力を振るった。挙げ句の果てには、医者・病院職員と患者家族との大乱闘にエスカレートした。首都の北京でさえこの有様。この国では、人間の心が完全に壊れていることはよく分かろう。
中国の経済界を震撼させた
香港発のニュース
心の崩壊と同時進行的に、経済の凋落と崩壊も順調に進んでいるようである。それを象徴するいくつかの出来事を紹介しよう。
たとえば8月29日、浙江省民間企業「諦都集団」会長の林作敏氏が逃亡先で捕まった一件がある。彼は「影の銀行」を作って一般人から13億元(208億円)の資金を集めて大規模な不動産投資を行ったが、見事に失敗。債務から逃れるために林氏の選んだ道は、すなわち夜逃げであった。しかし、それも結局失敗して拘束される身となったのである。ちなみに、拘束された時の彼の所持金はわずか30元(500円)。