今年8月15日の終戦記念日、安倍晋三総理自身は靖国神社の参拝を見送ったものの、新藤義孝総務大臣を含めた閣僚の3名が予定通り靖国参拝を行った。案の定、もう一つの「反日国家」である韓国と共に中国政府も反発の声を上げてみせたが、その激しさの度合いは予想を超えたものである。
その日、新藤総務大臣に次ぐ古屋圭司国家公安委員長の参拝が終わった直後に、3人目の稲田朋美特命担当大臣の参拝を待たずして北京の中国政府はさっそく反応した。中国外務省の劉振民外務次官は木寺昌人・駐中国大使を同省に呼んで「強烈な抗議」を伝えた。中国政府は今まで、外相・官房長官を除いた閣僚の靖国参拝を事実上「黙認」してきたことから、この日の駐中国大使を呼び出しての抗議は、異例とも言うべき強硬措置であった。
終戦記念日直前の中国の動き
このままでは日中関係の改善はますます遠ざかってしまうのではないか、との観測が一気に広がった。しかし、果たして本当にそうであろうか。ここで注目しておくべきことは、終戦記念日前の13日と14日の2日間、中国政府は日本側に対して、また別の意味をもつ外交行動をとったことである。
8月14日に中国の新華網が報じたところによると、同13日、中国の程永華駐日大使は東京で福田康夫元首相と会見し、両国の政治家が35年前に日中平和友好条約を締結した歴史を共に振り返り、現在の日中関係について意見交換したという。
その中で程大使は、「双方は速やかに両国の関係におけるマイナスの傾向を抑え込み、困難を克服し、問題を解決し、両国関係の改善に共に努力すべきだ」と述べたとも報じられている。
そして翌日の14日、程大使は都内で日本外務省の斎木昭隆外務次官と会談した。会談の内容は公表されていないが、斎木外務次官は7月末には安倍首相の「特命」をうけた形で、中国との関係改善の道を探るべく北京を訪問したこともある人物だ。つまり、彼は今や日本側における関係改善のキーマンの一人であることは言うまでもない。ということは、程大使と彼との会談もまた、北京訪問の続きとしての日中関係改善の「努力」の一環であることと理解すべきであろう。
猛烈な抗議は国内向けのパフォーマンス
13日と14日の2日間連続の程大使の外交行動は実に興味深いものである。この時点で、安倍内閣の数名の閣僚による靖国参拝はほぼ確定されており、日本のマスコミも「数名の閣僚が靖国参拝へ」と大いに報じている。もちろんそのことは中国の駐日本大使館と中国政府が知らないはずはない。つまり、13日、14日の時点では、中国政府にとって「8月15日の閣僚の靖国参拝」はすでに織り込み済み事項である。