2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月19日

 7月22日付米ヘリテージ財団のサイトに、Bruce KlingnerとDerek Scissorsの二人の同財団上席研究員が連名で、「日本は過去の修正より未来の政策に優先順位をおくべきである」という論説を掲載し、安倍総理は歴史の修正より未来志向で経済政策や日本の安全保障強化に力を入れるべきである、と論じています。

 すなわち、安倍総理は参議院選挙で地すべり的勝利を収め、日本を変える指導者になるための舞台が出来た。しかし日本の政策の停滞は根深く、安倍総理が停滞を打破できるか、未だわからない。

 地域の焦点は、「日本の軍国主義の再登場」への懸念である。安倍の歴史修正主義と戦中行為への謝罪への疑問提起は、不必要に挑発的で逆効果である。彼の発言は韓国との関係を冷やし、中国と北朝鮮の脅威から注意を逸らせた。

 安倍がどうするか、米国にとって大変重要である。米国は安倍に過去を掻き立てず、健全な経済・安保政策を実施するように助言すべきである。安倍は政治的安定と日本の地位回復の機会を与えられたのであり、それを無駄にすべきではない。

 選挙は自民党の圧勝であった。自民党の勝利は安倍の中国に対抗する意思と、アベノミクスに対する楽観論による。尖閣諸島問題は国防強化への支持を強めた。安倍のナショナリズムが良く語られるが、領土主張をしているのは中国であって日本ではない。中国はツキディディス政策、「強者は出来ることをし、弱者は耐え忍ばなければならない」を益々実行している。安倍は相互抑制と日中関係の重要性を強調し、日本の主権を主張する実利的政策を取っている。昨年、島の問題で感情が高揚した時、民族主義的デモがあったのは中国で、日本ではなかった。

 アベノミクスは金融緩和、財政刺激、構造改革の三つの矢からなる。このうち、構造改革が出来るかがこれからの課題である。

 ワシントンは何をなすべきか。ワシントンは日本に次のことを勧めるべきである。

 ・必要な防衛改革を実施すること。安倍は憲法9条を変え自衛隊を軍にするというが、日本政府は、集団的自衛権を認めることを優先させ、PKOでの交戦規則の制約も除去したらよい。憲法改正より隣国を心配させず、効果的改革になる。

 ・防衛費を増やすこと。防衛省は最近「白書」で安全保障上の問題を指摘したが、防衛大綱の改訂を行い、ミサイル防衛と南西諸島防衛により多くの資金を投ずるべきである。

 ・逆効果をもたらす歴史修正主義を放棄すること。安倍は特に米国の同盟国、韓国の声に耳を傾けていない。安倍のコメントは戦中の行動への謝罪を避けているように見える。安倍は明確に河野、村山談話を継承し、特に8月15日に靖国に行かないと言うべきである。


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