2024年12月26日(木)

安保激変

2013年5月25日

 歴史認識が再び大きな外交問題として浮上してきた。

 海外で「ナショナリスト」として知られる安倍晋三首相について、政権発足前からその保守的な言動に懸念が広がっていた。政権奪回後、保守的な「安倍カラー」を抑え経済回復に力を注いだが、いつ「本性」を現すかわからないと警戒する声は消えなかった。そして、安倍首相が国会で「侵略の定義は国際的に定まっていない」と発言し、閣僚の靖国神社参拝を擁護するに至って、ついに「本性」を現したと受け止められてしまった。安倍政権は、海外、特にアメリカで高まる懸念の声を反映してか、「村山談話」の継承を表明するなど、慎重に軌道修正を図った。

 一方、橋下徹・日本維新の会共同代表の軍と性に関する発言が、より大きな波紋を世界中に広げている。発言の主旨は、当時はどの国の軍にも慰安所はあったのに、日本だけが責められるのはおかしいということだ。しかし、この発言は、慰安婦の必要性を肯定する女性蔑視の発言として海外で伝えられている。世界では、慰安婦問題は人権問題として認識されており、当時必要だったかどうかは論点ではない。慰安婦が20万人もいたのかどうか、強制的だったのかどうか、という事実関係も人権問題という文脈では争点にはならない。

 慰安婦問題については、韓国やアメリカにこれに特化した活動家団体やNGOが存在する。それらの中には慰安婦問題を煽ることで資金を集め、政治に大きな影響力を持つようになっているものもある。日本側が慰安婦問題に関して否定的な発言をすることを手ぐすねを引いて待っているのだ。

歴史を「政治的手段」として
認識していない日本の政治家

 日本の政治家は、歴史を純粋に歴史として扱い、事実関係について争おうとする傾向がある。しかし、国際政治において歴史はあくまで政治の延長である。歴史は事実を伝えるためではなく、あくまで政治的手段として使われるのだ。日本の政治家が歴史を政治的手段として認識していないことが、歴史認識をめぐる外交問題が繰り返される大きな理由である。

 「勝てば官軍」という故事は、人類の歴史を通じた真理だろう。たとえ道理に背いていても、戦いに勝ったものが正義となり、負けたものが悪となる。力のあるものは思いのままに振る舞い、力のないものは苦しむのみ――トゥキュディデスが2500年前に指摘したこの現実が支配する国際政治の舞台においても、戦争の勝敗が正邪善悪を決定する。


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