安保激変

2013年5月25日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 歴史は、特に敗戦国の行動に制約を与える上で便利な道具である。たとえば、昨年9月の国連総会で、中国の楊潔篪外交部長(外相)は、日本が日清戦争の最中に「盗んだ」尖閣諸島を第二次世界大戦後も返さないのは、敗戦を受け入れていない証拠だ、と演説した。中国政府は、日本政府による尖閣諸島の購入を歴史に絡めることで、国際世論戦において優位に立とうとしたわけである。

 残念ながら、国際政治を舞台とする歴史解釈というゲームで、日本が勝つことはできない。そうであれば、日本の政治家は勝てない喧嘩に挑むべきではないのだ。第二次世界大戦の解釈や細かい事実関係の修正は研究者が行う。歴史は歴史家に任せればよいのだ。

勝つことはなくても
負けないようにすることは可能

 その代わりに、日本の政治家がやるべきことは2つある。

 1つは、歴史認識という国際ゲームで負けないことだ。このゲームで日本が勝つことはないが、負けないようにすることは可能だ。

 「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」

 これは、1995年に戦後50周年の節目に当たって、当時の村山富市首相の名前で出された「村山談話」の一部である。この明確な謝罪と反省を歴代の政権が継承し、日本政府の公式な歴史に関する見解と位置づけられている。「村山談話」は日本が過去を反省し、謝罪を表明しているということを国際世論に伝えるための政治文書である。慰安婦に関する「河野談話」も同様だ。

 国際政治の舞台では、日本から国際世論に真実を伝えることよりも、揚げ足を取られて日本の否定的なイメージを作り上げられないようにする方が重要である。この「村山談話」と「河野談話」を踏襲すれば歴史ゲームで負けることはない。日本の政治家は、これらの政治文書の細かい事実関係にこだわるべきではなく、その政治的な価値を受け入れるべきだ。

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