安保激変

2013年5月25日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

日本は「勝てるゲーム」に集中せよ

 もう1つ日本の政治家がやるべきことは、日本が勝てるゲームに集中することだ。過去を振り返るのではなく、アジアの未来を日本そして地域にとってより良いものにするためのゲームで勝負するべきだ。

 たとえば、公平・公正で自由な経済・貿易制度をめぐるゲームだ。中国の輸出規制措置や知的財産権保護などに関してWTOで違反認定が続いている。環太平洋経済連携協定(TPP)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、日中韓FTAなど、様々な経済統合に向けた動きが加速している。日本はこのような動きの中で、公正なルール作りを主導することに専念すべきだ。

 また、安全保障面でも、中国の国際法を無視した強硬姿勢、北朝鮮の核・ミサイル問題、領土紛争などが地域安全保障秩序を脅かしている。安全保障のゲームにおいて、国際法に基づいた紛争の平和的解決を推進することが、今の日本に何よりも求められている。

 これらアジアの未来に関するゲームでは日本は勝つことが可能だ。そして勝たなければならない。日本の政治家が取り組まなければならないのは、まさにこのアジアの未来を左右する問題なのだ。過去を振り返るより、未来を作り上げることが日本の使命である。

単一的な解釈を押しつける歴史教育からの脱却を

 最後に、歴史教育について一言ふれたい。

 歴史認識問題は、「あの戦争」を侵略戦争ととらえるか、自存自衛のための戦争とみるかという二者択一の議論から発生する。しかし、戦争の本質は騙し合い、奪い合い、殺し合いであり、弱い者、判断を誤った者が負けるのである。これが国際政治の冷徹な現実である。

 第二次世界大戦では日本だけでなく、アメリカも、中国も、ソ連も、ドイツも、すべての国が判断を誤った。日本が負けたのは、中国との泥沼の戦争を継続しながら、勢いが弱まり始めたドイツと組み、アメリカの参戦を招いて二正面戦争を戦うという愚を犯したからだ。対照的に、スターリンのソ連はドイツに攻められながらも慎重に欧州とアジアでの二正面戦争を回避し、戦勝国となった。

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