2024年4月21日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年5月16日

 「歴史的な懸案で未解決のままの琉球(沖縄)問題を再び議論できる時が来た」。こう主張した5月8日付の中国共産党機関紙・人民日報が、日中関係の新たな「火種」となっている。筆者は、中華人民共和国が成立した1949年以降の外交文書を外務省档案館で閲覧しているが、毛沢東主席は米国の施政下に置かれた沖縄を「日本に返還すべきだ」という態度を一貫させてきた。なぜここに来て沖縄問題を持ち出して来たのか——。それは、自らの歴史に「嘘」をつくものであり、その自分の歴史に背を向けた強引な戦略は、自分で自分の首を絞めるようなものだ。

「琉球は日本のものではない」

 人民日報論文は「『馬関条約』(下関条約)と釣魚島問題を論じる」という見出しを掲げ、政府系研究機関・社会科学院の張海鵬氏と李国強氏が執筆した。

 論文は沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)が歴史的に見て「台湾の付属島嶼」で、中国固有の領土だったか論を展開している。沖縄について言及するのは最後段である。

 「馬関条約(日清戦争の講和条約=1895年)に調印した際、清政府に琉球を再び問題にする力はなく、台湾とその付属諸島(釣魚島を含む)や澎湖諸島、琉球は日本に奪われた。カイロ、ポツダム両宣言に基づき、台湾や付属諸島(釣魚島を含む)、澎湖諸島の返還のみならず、歴史的な懸案で未解決の琉球問題も再び議論できる時が来た」

 この論文の意図は何なのか。また何を根拠に「再議論」できるというのか。筆者の1人、李国強氏は10日付の人民日報系の『環球時報』にこう語っている。

 「目的の一つは、釣魚島が琉球に属さないことを論証すること、第二に琉球は歴史的に日本のものではないことを説明することだ」

国有化直後、相次いだ沖縄論文

 実は沖縄に対する日本の主権を否定した文章や論文は、2012年9月11日の日本政府による尖閣諸島国有化以降、相次いだが、これら文章は次のように主張している。

 「カイロ、ポツダム両宣言に基づき、日本は本土4島を保有できるが、それ以前に武力で併合した沖縄列島は放棄しなければならない」(9月12日付『環球時報』)

 「琉球は中国と500年以上の宗藩(宗主国と属国)関係を維持してきたが、日本の武力によって併合された。日本の琉球国併合は国際法に合致しておらず、琉球の人民・政府や宗主国・清朝政府の同意、国際社会の認可を得ていなかった」「1971年の沖縄返還協定で米国が日本に引き渡したのは統治権(施政権)であり、主権ではなかった」(13年3月16日『世界知識』=外務省傘下の外交専門誌)


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