『沖縄タイムス』はさらに、県による県民意識調査も発表され、中国への印象は89%が否定的だったとし、「『県民は現在の中国には批判的だが、歴史的な親近感はある』とみる。『その沖縄だからこそ、冷静に日中友好の先導役を果たせる』と強調した」と続けている。
前出・環球時報(10日付)が沖縄タイムスのこの文章を引用したことは、中国政府の意見をある程度代弁しているからだ。『環球時報』はさらにこう続けた。
「環球時報記者が沖縄に取材に行った際、沖縄の現地住民が沖縄以外の日本人を『本土人』ということに注目した。『本土政府』はしばしば沖縄人の願いを無視し、沖縄人に取って代わってある種の決断を行う。(今年4月10日の)日台漁業協定の締結は最も良い例だ。
学者の「沖縄論」に反対せず
今回の人民日報論文の裏には何が潜むのか——。北京の共産党筋はこう漏らす。「沖縄に対する日本の主権を否定する主張はこれまでも、学者や軍関係者の間で議論されてきた。しかし釣魚島の国有化を受け、これまでこうした議論を抑えて来た共産党・政府も反対しなくなり、利用するようになった」
北京の消息筋によると、2012年9月の国有化前後、言論統制を統括する共産党中央宣伝部は「沖縄を使って日本に圧力を掛けろ」という通知を国内の主要メディアに出した。これを受け、9月には反日論調の急先鋒『環球時報』は相次ぎそういう趣旨の文章を掲載したのは前述した通りだが、その通知はその後、対日関係に配慮して継続されず、沖縄キャンペーンは盛り上がらなかった。
ここで問題なのは、なぜ人民日報論文が13年5月になって公表されたかだ。前出・共産党筋は「人民日報に出るということは、習近平指導部も掲載前にチェックしているはずであり、論文は共産党・政府の立場を反映したものだ」と断言した。
沖縄の帰属について「未確認」と主張した今回の論文は「釣魚島問題をはっきり整理する」という人民日報連載キャンペーンの第1弾として掲載された。「学者たちがかなりの準備を進めてきた成果」(共産党関係者)である一方、「急きょ始まった」(中国政府筋)ものでもあった。その証拠に文中に引用した濱川今日子「尖閣問題の領有をめぐる論点」という論文の日本語表題が「尖閣諸島の之領有そめぐる論点」と誤記されるなどチェックも甘いと言わざるを得ない。
背景に日台漁業協定と「主権回復の日」
なぜドタバタだったかと言うと、「沖縄問題で圧力をかけるのは今がチャンス」(共産党関係者)という判断があったから、との見方が強い。