江戸時代のグルーミング
今でも時折、使われる言葉に「垢抜けた」という言葉がある。古風な言葉であるが、これは上京人にとって最上級に近い褒め言葉の一つだ。
江戸時代の人はよく風呂に行った。江戸時代は、エアコンもない上に、舗装もされていない。強風が吹くと砂まみれになる。口の悪さと喧嘩早いが喧嘩に強くないのが特徴の江戸っ子だが「清潔さ」も特徴の一つに挙げられる。
江戸の人口の60%は男性。相続にあぶれた次男坊、三男坊がやってくるからだ。女性にモテたいのは、古今東西同じ。だが、好みはいろいろあったとしても、垢まみれの不潔な男性が良いと言う女性はまずいない。
江戸中期以降は、銭湯でむだ毛も処理するようになる。と言ってもカミソリでゾリゾリ剃るわけではない。銭湯に備え付けの「毛切り石」を使う。毛切石は軽石2個セットにしたもので、石の間にムダ毛を挟み、擦り切るのだ。
江戸時代は、力仕事するとき、双肌脱ぎ、尻ぱしょり、褌一張になることが多い。体毛が見えるのは、見苦しいとされたわけである。昔も今も、女性による男性チェックは厳しいのだ。
表立った文化ではないが、日本人のむだ毛処理は連綿と行われてきており、今なんとなく始まったことではない。
大きな市場が見込めるボディ・グルーミング分野
洗濯洗剤のアリエールなどで有名なP&Gは、世界一の消耗品取り扱い会社。洗剤以外に、いろんな分野でも有名だが、グルーミング分野では「ブラウン」「ジレット」「(ジレット)ヴィーナス」の3ブランドを持つ。
グルーミングの元々の意味は「毛繕い」。毛は「髪」「髭」「体毛」に分かれるが、「髪」は美容院、床屋で整え、維持するため、グルーミングには入れられないことが多く、通常は「髭」「体毛」の日常処理を指すことが多い。
P&Gは、2005年に「ジレット」社をM&Aするが、「ブラウン」はジレット傘下になっており、P&Gは電気シェーバー、普通のシェーバーを有するグルーミングのトップ企業になった。
2024年P&Gが日本市場で、ボディ・グルーミング(以下 体毛処理と表記)に関する調査をした結果、18~64歳の日本人男性で体毛処理しているのは36%。若年の10~40代だと52%という結果が出た。
年齢が下がるにつれ、体毛処理は当たり前になっている。これが習慣化された将来、ほとんどの男性が体毛処理をするだろうと予想される。
そして、体毛処理をする人の半数は体毛処理用に専用設計されたモデルを使用しているが、もう半数は、髭用シェーバーなど、ありもので間に合わせているという結果も出た。
なぜ体毛処理用シェーバーがよいのか?
筆者はこの原稿を書くにあたり、改て、ブラウンの体毛用の電気シェーバー、髭用の電気シェーバー、ジレットの体毛用シェーバー、髭用のシェーバーを体毛に試してみた。
結論から言うと、体毛処理用でないと効率が上がらない上に、肌を傷めることなどがあるため、「専用」以外お勧めできないと言うのが答えだ。
まず、電動だと処理する時の環境に合わないモデルがあること。体毛処理は裸で行うので「風呂場」が基本となる。髭用の電気シェーバーは、風呂場で使えるものもあるが、安いモデルは、ドライ環境=人が普通に生活する環境が基本になる。電気は水があると漏電したりするからだ。
次に髭用は、電気シェーバー、シェーバー共に、「肌に無理なく深剃り」できることが合言葉。
電気シェーバーは、肌に触れる「網刃(外刃)」の網部から出てくる髭を内刃で切る。加えて、電気シェーバー、シェーバー共に切る前に髭を引き出す機能を付加し、深剃りを可能にしている。
この時、ギリギリまで肌に刃を押し当てることになる。深剃りを目指すことは、どうしても皮膚への負担が大きくなる。このため今の「髭」用は当たりの制御を兼ねてヘッドが大きい。当たりを柔らかく、皮膚のある部分にだけ圧が集中しない様にするためだ。電気、手動共に同じ傾向であり、今や5枚刃が当たり前。円形刃の電気シェーバーだと肌との接触面積が大きすぎ、独特の使い方をする必要がある。
それはさておき、そんな優れた髭用の電気シェーバーで「体毛」を刈ると、刈れない。体毛長すぎ上手く網目に入ってくれないのだ。逆に手動の場合はあっという間に刃と刃の間に体毛が目詰まる。こちらも体毛が長すぎるからだ。体毛用の電気シェーバーは網刃を使わないミニ・バリカン、体毛用シェーバーは5枚刃に比べるとスカスカに見える刃並びになっている。
また電動と手動どちらがお勧めかと言うと、電動だ。理由は、左右の手、ほぼ同じ様に使用できるからだ。手動だと、利き腕はきちんと剃れるが、逆手だと力の制御が難しく、気を許すと剃れてないところが出てくる。
加えて言うと体毛処理は、完全に剃り上げる「ツルツル派」と、ある長さを残す「整え派」の2派に分かれる。電気シェーバーの場合、アタッチメントで長さ調整ができるので、ツルツル、整え、自在でもある。