2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年5月16日

 その一つが、前出『環球時報』が指摘した日台漁業協定に対する沖縄県の反発。もう一つが、日本政府が4月28日に開いた「主権回復の日」式典に沖縄県民が抗議したことだった。

 中国共産党・政府は、沖縄を「置き去り」にした安倍政権に対して県民の不満が高まっていると判断したのだろう。こうしたタイミングを見極め、安倍晋三首相に揺さぶりを掛けようとした、というのが前出・共産党関係者の解説である。

 そもそも、中国は「古来、中国固有の領土」と主張する尖閣諸島と、朝貢していたが、歴史的に一度も中国の領土に組み入れられたことのない琉球・沖縄とでは対応も異なることは中国政府も熟知している。だから中国政府は、人民日報論文を受け、日本政府が抗議しても「琉球と沖縄の歴史は学術界で長く関心を集めてきた問題だ」(華春瑩外務省副報道局長)というだけで、政府の立場は明言していない。しかし党・政府系のメディアや学者に「沖縄に対する主権は日本にない」と言わせ、華副局長も「この問題(沖縄の主権)が際立っているのは、釣魚島問題で日本側が絶えず挑発行動を取り、中国の領土主権を侵犯したからだ」と強調し、「沖縄」を持ち出し、「尖閣」問題での圧力材料にしていることを隠そうとしない。

「琉球王国復活」も提起

 つまり沖縄の主権を持ち出した狙いは、沖縄の主権そのものを狙っているのではなく、尖閣諸島で譲歩しない安倍首相に対して「沖縄」で揺さぶりを掛けようとの明確な目的があるのだ。「沖縄」を取り上げることで、尖閣問題での議論が今後行われる場合に備え、交渉のハードルを上げておこうとの思惑も見え隠れする。

 人民日報論文が何を言いたいのか、より分かりやすく解説したのが5月11日付『環球時報』だ。

 同紙社説は率直に「日本が最終的に中国と敵対する選択を取るならば、中国は当面の政府の立場の変更を検討し、琉球(沖縄)問題を歴史的な未解決の懸案として再び提出しなければならない」と提案している。つまり安倍政権が尖閣をめぐる対立で妥協しなければ、政府も正式に「沖縄」を持ち出すべきだと迫った内容になっている。

 環球時報はその上で、「再議論」について次の3段階で行うよう提案している。

(1)「琉球史研究」の民間組織設立や「琉球王国復活」を目指す団体への支持など民間レベルの研究・討論の開放

(2)日本政府の対中姿勢を見極めた上で、国際会議での沖縄主権の提示など中国政府の政策変更

(3)より日本が強硬になれば、「琉球王国復活」に向けた勢力を育成


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