共産党の元対日当局者も「(新中国建国後は)ずっとわれわれは沖縄を手に入れるつもりはなかった」と証言している。
大使館向け電報でも徹底指示
中国外務省档案館に所蔵された1964年7月の外交文書「『ソ連はあまりに他国領土を取り過ぎている』という毛主席の談話」でも、日本への沖縄の返還を確認している。
64年7月10日、毛主席と会談した日本社会党の国会議員は、北方領土問題に対する見解を質したところ、毛氏は「あなたたちに返還すべきだ」と答えた。背景には、当時の反米闘争と中ソ対立の中、毛氏は日本の領土返還要求を支持していたことがある。この外交文書には、こうした毛氏の意向に沿い、当時の王炳南外務次官らが領土問題の原則について語った談話が電報として駐外大使館向けに発出されている。
「日本国有の領土は今日、米国に占領された沖縄であろうが、ソ連に占領された千島列島であろうが、日本が取り戻そうと要求するのは正しい。当然日本に返還されるべきだ」
この電報の最後には次のような注意も記されている。「外交活動の中で、領土問題を自ら話してはいけない。質問されて答える場合には、個人の見解として王次官らの談話を簡単に伝え、決して突っ込んではいけない」
正しかった日本政府の抗議
毛沢東時代以降、中国が「沖縄は日本のもの」という結論を貫いていたのは外交文書からも明白である。今回の人民日報論文を受け、米国務省のベントレル副報道官代理は沖縄の主権が日本に及ぶと明言した。日本政府の抗議に対して米政府が即座に日本を後押ししたことは、抗議を「受け入れられない」と拒否した中国にとっては手痛い結果となった。
国際的常識から外れた人民日報論文に対して断固抗議した日本政府の判断は正しい。共産党一党独裁の下、党がメディアや学術界を統括する中国の巧みな宣伝戦略に対抗するためには、日本として外交文書など歴史的事実を根拠に中国が過去にどう言って来たか、そしてどういう「嘘」をついているか把握しておくことが必要だ。
さらに中国の主張にいちいち大騒ぎすることで「沖縄」の「尖閣化」を目論む共産党宣伝工作の術中にはまらず、冷静に対応することも肝心である。
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