2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月19日

 ・アベノミクスの第3の矢を実施すること。土地使用規制、年金、労働市場、財政赤字減少などの改革を進めるべきである。

 安倍は米国の政策と合致した安全保障政策を主張している。北朝鮮と中国の脅威がある中、日米同盟はより重要である。

 米国は日本の安全保障上の役割拡大を奨励するとともに、未解決の歴史問題への地域の懸念に配慮すべきである。オバマ政権は安倍政権に、歴史修正主義は日米の戦略利益を妨げると明らかにすべきである、と論じています。

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 この論説は、安倍政権が歴史認識についての修正をせずに、経済面および防衛面で必要な措置を実際にとれば良いと言います。今や米国で常識的になっている意見を繰り返したものです。こういう論が常識になっていることには留意する必要があります。とりあえずそれに従うことに別に異論はありませんが、同時に、こういう論説には大きな問題もあります。

 歴史修正主義というのは、正統な歴史認識があり、それを修正しようとする動きがあるという前提で使われている言葉ですが、第二次世界大戦についての歴史認識は種々あり、正統な歴史認識のようなものがあるとは言えません。中国共産党の歴史認識は時代によって変わっています。韓国の教科書にある歴史記述などを、正統であると認めることは到底不可能です。東京裁判も、ソ連の中立条約侵犯を正当化するなど、勝者による茶番劇で、正統な歴史観とはほど遠くなっています。

 また、上記論説は、憲法9条の改正は近隣諸国の懸念を呼び起こすといいますが、軍備増強をし徴兵制をとっている国が、9条改正について云々言うのを気にしなければならないなどというのは、おかしな話です。

 自由民主主義国において、政治指導者が、この歴史認識が正しくこれは間違っているなどという立場にはないと考えます。戦後70年もたったので、復讐の激情を離れて冷静に考えられることを期待します。勝者がすべて正しく、敗者がすべてにおいて悪いなどと言うことがあろうはずはありません。

 上記論文には、ナショナリズムが危険なのは中国であり日本ではないなど、いい観察もあります。そういう意味で、論説は常識的なものですが、少し深みに欠ける気がします。ただこれが現時点でのワシントンの常識を反映しているのだと思います。

 集団的自衛権の行使と防衛費の増額をまず実現することを優先すべきであるという点では、クリングナーなどと同意見です。他方、歴史問題の認識においては、注意が必要でしょう。まず前者を解決し、後者は、現在の中韓が人工的に起こしている小さな嵐の小康状態を待ってから、抜本的に解決すべきだと考えます。

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