チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年9月25日

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 9月に入ってから、香港発のあるニュースが中国の経済界を震撼させた。香港一の大富豪で実業家の李嘉誠一族が、大陸と香港にある不動産などの資産53億ドル分を売却し、中国ビジネスからの撤退を着々と進めていると報じられた。機を見るに敏で天下一品の彼が中国から身を引くということは、この国におけるバブル崩壊の前兆であると、誰もがそう見ているのだ。たとえば中国屈指の不動産開発大手の「万科集団」会長の王石氏は自分の微薄(ミニブログ)で、「それは信号だ。われわれも気をつけよう」とつぶやいた。

 中国から逃げ出そうとしているのはもちろん李嘉誠だけではない。8月20日付の産経新聞の記事によると、今日本国内では、中国に進出している中小企業を対象に開催されている「中国撤退セミナー」が、参加者キャンセル待ちの大盛況であるという。多くの日本企業もやはり中国経済の危うさに気づいて撤退を考えようとしているのである。

「中国経済悲観論」を説く専門家も

 もちろん日本人だけでなく、中国人自身もその危うさをきちんと認識している。たとえば最近、「中国経済悲観論」を力説するような専門家が国内でも増えている。

 8月25日、広東省社会科学院総合開発研究センターの黎友煥主任は新聞に寄稿して、不動産バブル・地方債務・影の銀行という3つの爆弾を抱える中国の金融システムは、3年以内に局部的構造的危機が爆発すると予言した。

 9月中旬、中国の深圳大学教授で、国家発展と改革委員会(中央官庁)顧問の国世平氏は、国内経営者向けの講演の中で不動産価格の暴落を予言した。「皆様はお持ちの不動産物件を一日も早く売り捌いた方が良い。一軒も残さずに」と助言したという。この人は1997年、香港の不動産暴落を予言して的中した実績があるから、今回の予言も見事に当たるのではないかと思われる。

 9月19日、「21世紀経済報道」という新聞紙に江蘇省銀行監査局の局長を務める経済官僚が論文を寄稿した。その中で彼は、中国は今まで紙幣を濫発して成長を促した結果、経済全体がバブル化し、成長モデルが限界にぶつかり、全面的危機が迫って来ていると論じた。中国の官僚でありながら真実をよく語ってくれた、と感心するほどである。

 実際、まさにこの鋭い経済官僚の予測する通り、中国経済の「全面危機」は日々迫って来ている状況である。

 国内紙の『毎日経済新聞』は9月11日、北京、上海、広州、深圳などで複数の商業銀行が住宅ローン業務を停止した、という大変ショッキングなニュースを伝えた。数日以内に多くの国内メディアも同様に報道したことから、それは事実であろうと思われる。そしてそれから一週間、成都・重慶・済南・南京・洛陽・合肥などの地方都市でも、多くの商業銀行が住宅ローン業務の停止あるいは貸し出しの制限に踏み切ったと報じられている。

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