海南省(島)は中国の5つの経済特区(深圳、珠海、汕頭、厦門、海南:筆者)のうち面積では最大だ。しかし、開発は停滞し2009年の一人当たりのGDPは2800ドル超と全国で中の下レベルだ。ただ美しいビーチ、新鮮な空気が多くの観光客を引きつけてきた。国連世界観光機関(UNWTO)と海南省政府は共同で「海南省観光発展総体計画」を策定したが、それには2020年までに同省にアジアで一流の国際的なリゾート地を作る計画が記されている。国務院も2009年に海南国際観光島構想を打ち出し、医療と観光が融合した国際競争力のある景勝地を作ろうとしている。
中国では土地を調達するということはすなわち富を手に入れるも同然であり、李女史は1年もせずに広大な土地を手に入れた。彼女はかつてこうに述べていた。「私の成長は自分の一歩一歩の努力の成果によるものです。…能力以外の資本はゼロに等しいのです」と。確かにその通りだ。海南ボアオ娯楽城プロジェクトの用地で李女史の成功は資本投資によるものではなかった。上層部からの青信号で道を開けさせただけだから。
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【解説】
李女史はさっそく反撃した。インタビューに答え、不動産業に進出したこともなければこれからもない、と反論した。憶測には「法的手段」を取る可能性さえ示した。香港の報道機関は李鵬一族が緊急家族会議を開いたと報道した。記事は彼らの急所を突いたといえるかもしれない。この記事は政府高官の子弟が権益を背景にビジネスに乗り出す様子を克明に記述しており、記事に中国国内を含む多くのメディアも追従した。習政権の汚職取締りでは更迭された閣僚、高官は既に20人を超え、石油業界を中心に力が入れられてきたが、このレポートが出てからにわかに電力業界にその矛先が向くのではないかと関心を呼ぶようになっている。
李鵬首相の牙城であった三峡ダムの建設、管理を管轄する国有大型企業(国有「中央企業」の一つでもある)である長江三峡集団に対して党の中央規律検査委員会の巡視グループが入り査察を行った。そのプロセスでトップ2人が職を辞したことからいよいよ「虎退治」が三峡ダム関連や電力業界に向くのではないかとマスコミが色めきたった(ただ少ししてから曹広晶董事長は湖北省副省長に、陳飛総経理は政府の三峡工程建設委員会事務局副主任に就任したことからマスコミの勇み足かもしれない)。そして李鵬元首相一族では李小琳女史だけではなく、元首相の息子、李小鵬〔山西省省長〕氏も注目を浴びている。
しかし、ここで私見を述べれば、習政権が展開してきた「虎、ハエ退治」が華僑メディアで騒がれるように李鵬一族にまで手が及ぶとは信じがたい。汚職取締りを元首相というナンバー2経験者まで含めるとほとんどの高官がひっかかり、その結果、権力闘争が激化し、政権が揺らぎかねないためだ。
とはいえこれまでタブーであった中国政府内部の汚職が海外華僑メディアに触発され、中国国内でも変化球のような報道が出るようになったのは薄煕来事件以降の新しい傾向だろう。紹介した『亜洲週刊』は香港誌だが、中国国内にも骨のある記者はいる。政治改革が掛け声だけで終わらないためにも、「第四の権力」としての役割を発揮すべくマスコミには頑張ってほしいものだ。
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