3月25日付け仏ル・モンド紙は、中国の習近平主席が初めての欧州訪問で打ち出した「新シルク・ロード計画」は、中国と欧州との経済関係を更に緊密化するものとなるだろう、との解説記事を掲げています。
すなわち、習の初めての欧州訪問は、オランダに始まり、フランス、ドイツ、ベルギーと続く。習主席は、パリのユネスコ本部で演説を行い、「新シルク・ロード計画」を打ち出す。ドイツでは、中国南西部の重慶市から週3回列車が到着するデュースブルクを訪問する。新シルク・ロード外交は、輸送回廊を築くことを目的とし、それによって、中国内陸部への安定的輸送路が確保でき、同時に、中国の欧州製品輸入の促進にも役立つだろう。今回、習は、ロンドンを避けた。おそらく、英国とダライ・ラマとの直接対話が原因だろう。習がフランスで最初に訪れたリヨンは、シルク・ロード計画と関係がある。リヨンの絹製造業者は、19世紀半ばから中華帝国と取引があったのである。
習の訪仏の主要目的の1つは、ド・ゴールと毛沢東が結んだ中仏国交正常化50周年を祝うことである。中国は、今や世界の主要問題における紛れもないパートナーである。
クリミア問題に関して、中国は、内政不干渉を重視して非常に慎重な態度を取っているが、ロシアへの配慮から、その立場は後退している。欧州のある中国専門家は、「中国人は曖昧な態度を取るが、それは彼らを利するだけである。ロシアは制裁されれば、より中国に向かってしまうだろう。」と述べた。
中仏国交正常化50周年の機会に、フランス側が求めるのは、国連安保理常任理事国である中仏両国が、世界の様々な問題でより協力することである。2008年の北京オリンピックの聖火が通過する時、パリではチベット支援のデモがあり、それ以来、両国関係は冷えていたが、今回は、多くの祝賀行事が繰り広げられている。今回、中国は、20頁にもわたる中仏協力の行動計画を提案してきた。そこには、文化交流もあるが、原子力から航空学まで含まれる。
中欧関係は、数カ月前よりも良い雰囲気である。ソーラー・パネルに関する合意も出来たし、訪問直前には、中国の欧州産ワイン輸入の話もまとまった。これによって、2020年に向けた中国と欧州の「戦略アジェンダ」の議論も進むだろう。
そして、習主席は、最終的には、EUが予定している中国の通信機器のダンピング調査を止めるよう求めるだろう。ファーウェイ(Huawei華為)等の関係企業は、驚くほど集中的にEUに対してロビー活動を展開している、と報じています。
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習近平は、端倪すべからざる人物であり、曲者です。昨年春全人代で国家主席に就任した演説では、「中国の夢」を掲げ、次いで「新しい大国関係」を打ち出し、続く米中首脳会談では、「ネクタイ無しの保養地での会談」を提案しました。実は、ふたを開けて見ると、その内容はいずれも従来の教条主義と中国の一方的利益の主張でしたが、少なくとも当初は、アメリカ好みの、従来とは違う新しい中国の指導者のイメージを演出することに成功しました。