2024年4月20日(土)

中国メディアは何を報じているか

2014年6月10日

 最も早く現場についた警官たちの大多数が銃を持っておらず、持っていた警官でも銃弾6発全てを打ち果し、犯人に命中しなかったばかりでなく逆に切り付けられ負傷した。他の警官も警棒や盾で暴徒と格闘した。銃器を持ったSWAT(特殊警察)が現場に到着して初めて形勢が逆転した。SWATは15秒で5名の暴徒を打ち倒した。

 昆明事件で露呈した警察の武器使用の経験不足は、公安内部でショッキングだった。そのため「ためらわずに剣を抜くべき」という声が強くなった。ただこれ以前は銃使用を鼓舞する声は「銃器の濫用」(すべきでない)という世論の前に圧倒されていたのだ。

 2011年1月、山東省泰安市で3人の捜査員が捜査の際に容疑者に射殺されるという事件もあった。3人とも拳銃を持っていなかった。2013年10月末に広西チワン族自治区貴港市の警官が泥酔し、食堂店主夫婦に発砲し、店主の妊婦が死亡した。警官は死刑判決を受けるという事件もあった。

最も正しいのは「使わないこと」

 銃を保持するということは使用がその前提だが、朱家明のように十数年にわたって「5項目の禁令」に象徴されるように警官でも銃を配布されない傾向もあり、既に多くの下層警官にとっての暗黙のルールとなっていた。2003年2月に「5項目の禁令」が出されてから指導責任が問われるようになったため、少なからぬ地方で警官に拳銃が配布されたが、朱家明のケースと同じく、組織で集中管理されていた。

 銃の受け取りはつぎのような手順で行われる。まずネットで個人の登録番号を記入し、パスワードを入れる。そしてその情報を見た管理者が銃器を使用する際に鍵を使って保管庫を開き、銃を使用する警官が保管庫のところに受け取りに来た際に二人の指紋を照合して銃の受け取りが完了する。

警官が銃をなくして騒動を引き起こす映画『尋槍』(The Missing Gun)

 理論上は仕事で銃が必要ならいつでも所属単位に申請して批准を受ける。しかし、実際には多くの警官は申請したがらない。一旦拳銃を手にしたら24時間持ち続けなければならず、家に置いてはいけない。ホテルやデパート、高級クラブに行ってはいけない。友人との会食にも参加できず、銃をなくしたら軽くて規律処分、重いとクビになり刑務所送りになる。(警官が銃をなくして騒動を起こすという映画『尋槍』が2002年に放映され、話題になった:筆者)

 公務で発砲しても面倒だ。すぐに上層部に報告しなければならない。検察が介入してきて調査が行われる。規定は許可を得た場合を除き、拳銃を持って北京市街地に入ることを禁止している。ところが多くの警官はこの条項を知らないばかりか、実践では意味がないと思っている。規定では中国警察の銃使用の原則は「法に依拠して正確に使用する」というものだが、何が「正確」かについての基準はない。


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